中華圏&韓国で大人気の台湾俳優、シュー・グァンハンってどんな人?原石が光るまでの歩みをたどる
3月にひと足早く公開された台湾で初登場1位のヒットを記録するなど、好成績を収めた日台合作映画『青春18×2 君へと続く道』。日本でもいよいよ5月3日(金・祝)に公開を迎える。藤井道人監督が手掛けた初の国際プロジェクトで、日本と台湾を舞台に、淡い初恋の記憶と、人生の岐路に立たされた人間の惑いや再生を描くラブストーリー。 【写真を見る】無邪気な笑顔にハートポーズも!イベントでたっぷりのファンサービスをしたシュー・グァンハンに黄色い声援が止まらない 主人公は、大学の同級生と共にゲーム会社を立ち上げ、ある思いを胸にがむしゃらに働いてきた36歳のジミー。しかし、ある日、代表の地位を解任されてしまう。目標を失った彼は、18年前に日本から台南にやってきたバックパッカーのアミとの記憶をたどり、彼女の故郷を訪れる旅に出る。 日本と台湾という地理的な距離だけではなく、18年前と現在を行き来するこの作品で、 “旅人”ジミーを演じているのは台湾の俳優、シュー・グァンハン(許光漢)。この映画を観た人は皆、18歳と36歳のジミーを違和感なく演じ分ける彼に驚かされるはずだ。 台湾でのプロモーションの様子や香港国際映画祭での上映会の動画を見たことがある方は、グァンハンが現れるなり巻き起こる黄色い歓声にお気づきのはず。日本では本作をきっかけに初めて彼を知る人も多いと思うが、シュー・グァンハンは、台湾をはじめ中華圏はもちろん、韓国でも絶大な人気を誇るアジアのスターだ。2022年に2日連続ソウルでファンミーティングが行われ、チケットが5分間で完売したほど韓国では大人気。出演の韓国ドラマ「No way out」も控えており、初めて韓国でデビューした台湾俳優となる。 モデルとして活躍していた時期もある抜群のプロポーションに、さわやかな笑顔。印象を自在に変えてどんなキャラクターも自分のものにしてしまえる演技力がグァンハンの強み。典型的な二枚目ではないがゆえに、演じられる役柄の幅は広く、しかもそれらのキャラクターのどれもが魅力的に映る。『青春18×2 君へと続く道』では、18歳の青臭さと、挫折を経験した36歳の大人の深みを自然に演じ分けて見せる。 その表現力はどのように培われたのか?「シュー・グァンハンをもっと知りたい」という方々のために、彼の軌跡をフィルムグラフィーと共に紹介したい。 ■C-POP界のスーパースターによる大ヒット曲で初めて脚光を浴びる グァンハンが初めて大勢の目にとまったのは、まだ芸能界に入る前のこと。子どものころ、ぜん息を患っており、健康のために卓球教室に入ったことがきっかけで、アジアを代表するポップスター、ジェイ・チョウの2003年のヒット曲「三年二班」のミュージックビデオに出演。ジェイ・チョウの幼少期を演じた。 ちなみに、もちろんMVに出ていた小さい男の子の名前などまだ知るよしもなかった当時、「三年二班」は筆者が暮らしていた北京でも知らない若者はいないほど街中で流れていたヒット曲。いま思えばグァンハンは、スターになる星の下に生まれてきたとしか思えない。 もともと歌が得意で、高校、大学とバンドを組んでボーカルを務めていたというグァンハン。最初は歌手になる夢を抱き、芸能事務所に入ってデビューに向けたレッスンを積んでいた。その間、マレーシアのドラマ「潛入藍中籃」に出演。先に俳優デビューを果たすが、歌手デビューの話のほうは流れてしまう。その後、しばらくモデルとして活躍。転機が訪れたのは2015年だった。 ■名監督たちによる育成プロジェクトで演技を磨く 2015年、ワン・シャオディ監督がツァイ・ミンリャン、チェン・ユーシュンら7人の著名な監督に声をかけ、俳優、脚本家、監督など若手の人材育成とドラマ制作を目的にしたプロジェクト「植劇場」が立ち上がる。300人以上の応募者のなかから選出された新人俳優24人が「Qplace」という演技教室に参加し、演技を磨いて実際に制作されるドラマシリーズに出演するというものだ。このプロジェクトに参加したグァンハンは、「戀愛沙塵暴」「先生、本当の恋って?」に出演。8人の監督とゲスト、視聴者、スタッフらからの投票で24名新人俳優中3位という高評価を受けた。 とりわけ、性犯罪を題材にした「先生、本当の恋って?」では脳に障がいのある青年を演じ、台湾のエミー賞といわれる第52回金鐘奨の助演男優賞にノミネートされるなど高く評価され、注目されるようになる。 「Qplace」の投票で1位と評価されたのは、日本でも話題を呼んだ『1秒先の彼女』(20)と、6月14日(金)に日本公開を控える『オールド・フォックス』に出演しているリウ・グァンティン。このほか、「Qplace」出身者からは「最後の雨が降るとき」のヤン・ユーリーや、「悪との距離」のチェン・ユーらがブレイク。いずれも現在の台湾の映画・ドラマ界を担う俳優に成長しており、どれだけハイレベルなクラスだったのかがわかる。 ■ラブコメの個性的な脇役で爪痕を残す 台湾といえばアイドルドラマも人気のジャンル。期待の若手俳優として注目されはじめたグァンハンも、「アテンションLOVE」や「年下のオトコ」などに出演した。脇役ながらキュート&コミカルな演技でインパクトを残している。 「アテンションLOVE」では、ヒロインの学生時代の同級生役。臆病者でちょっと情けないキャラクターだが、そんな自分のダメさ加減を好きな人に指摘されてうろたえるシーンなどは彼のうまさが光る。 「年下のオトコ」には年上女性と恋に落ちる主人公の同級生役で登場。ヘルメットを思わせるヘアスタイルも、しっかり自分のモノにしているのはさすが。出番は多くないけれど、個性的な脇役を丁寧に演じている。 このままいけば、個性派バイプレイヤー路線に走っても不思議ではないカメレオンぶりだが、シュー・グァンハンは“持ってる人”だった。 2019年は彼をスターダムに押し上げる飛躍の年となった。ドラマ「罪夢者」や映画『ひとつの太陽』など、演技者としてさらに評価を高めた作品が立て続けに配信、公開されたほか、彼の人気に火をつけたドラマ「時をかける愛」の放送がスタートしたのだ。後編では、グァンハンをアジアの人気俳優に押し上げた「時をかける愛」と、必見の作品たちを紹介していく。 文/新田理恵
【関連記事】
- シュー・グァンハンが清原果耶をエスコート!香港国際映画祭で『青春18×2 君へと続く道』のプレミアが開催
- シュー・グァンハン、清原果耶と藤井道人監督は「素敵なパートナー」と笑顔!映画『青春18×2 君へと続く道』で芽生えた絆に感謝
- シュー・グァンハン、清原果耶とのW主演作『青春18×2 君へと続く道』は大人の魂が宿っている映画とアピール!藤井道人監督は映画作りの楽しさを再認識
- シュー・グァンハンと清原果耶が台北で『青春18×2 君へと続く道』の”ランタンを飛ばす”!台湾プレミアを現地からお届け
- 藤井道人監督がひと目惚れした”台湾の最高な役者”は誰?『青春18×2 君へと続く道』の台北記者会見をレポート