新日本酒紀行「源流どぶろく 上代」
● 24歳で事業承継!田んぼから始まるどぶろくで未来の町を描く 遠藤みさとさんが率いる上代の「源流どぶろく 上代」の原料米は、鎌倉山麓の上代地区で育む酒米五百万石の50%精米だ。日本酒ならば純米大吟醸クラスで、クリーミィな食感と優しい甘味が醍醐味。その昔、上代地区はどぶろく造りが盛んな地で、法律で自家醸造が禁止された後は、地元の酒蔵の酒を楽しんでいた。しかし廃業。そこで、2009年に地元の米で酒を醸して町を盛り上げようと有志が集まり、鳥取県で初めて、どぶろく特区の認可を受け、小学校の廃校跡で醸造を始めた。それから12年がたち、メンバーの高齢化が進んで廃業を決意。 【写真】「酒造りのこだわり」はこちら! それを知って名乗り出たのが、当時24歳の遠藤さんだ。出身は米子市だが、父親がどぶろくの立ち上げに携わり、幼少期から田植えに参加。「鳥取の良いものをなくしてはならない」と22年に事業を承継した。杜氏候補には香川出身の2歳年上の請川雄哉さんに声を掛けた。ものづくりがしたかった請川さんは、前杜氏に付いて技術を習得し酒質を向上。二人は新商品開発に挑み、ノンアルコールで朝からサラリと飲める甘酒「AM7(エーエムセブン)」と、粒感が楽しい「AM10(エーエムテン)」を発売。
遠藤さんは各地で試飲会を行い、持ち前の笑顔と行動力で生産量を3倍に伸ばし、冬だけの仕込みを四季醸造に。町外から田んぼに人を集め、地域交流も行い、近隣農家の果実や蜂蜜とのコラボレーションも企画中だ。「農家あってのどぶろく」と遠藤さん。田んぼから始まるどぶろく造りで未来の町を描く。
(酒食ジャーナリスト 山本洋子) ※週刊ダイヤモンド2024年6月22日号より転載
山本洋子