深刻化する米移民問題、大統領選の波乱要因に-現行制度の不備鮮明
(ブルームバーグ): 米テキサス州イーグルパスを流れるリオグランデ川沿いにアルフォンソ・ネバレス氏の放牧場がある。放牧場の端に張り巡らされたらせん状の有刺鉄線はメキシコ側からの越境者を阻止するのが設置目的だが、越境者やその衣服を傷つけるだけだ。
ネバレス氏は州兵が500エーカー(約2平方キロメートル)の放牧場の周りに張った有刺鉄線について、恐ろしく野蛮であると同時に、州警察を投入しヘリコプター、ドローンなどを使った国境警備のための他の取り組みの多くと同様、おおむね効果に乏しいとみる。
州議会議員(民主)を務めた経歴を持つネバレス氏は「これらは全く問題解決にならない」と語る。同氏が立つ近くには越境者が廃棄した衣類などの残骸が山積みになっている。
不法移民の問題は2024年の米大統領・議会選で重要な焦点の一つに浮上している。ブルームバーグ・ニュースとモーニング・コンサルトが実施した世論調査によれば、有権者にとって経済に次ぐ主要関心事項とされた。
昨年12月に連邦の当局者が「遭遇」した越境者は1日当たり計1万人と前代未聞の水準に上って裁判所は対応不能に陥り、米国の制度が資金不足で透明性を欠き、破裂寸前であることが浮き彫りとなった。
ネバレス氏はこうした状況について、「誰が次期大統領に選ばれ、どう対処されるかはこれで決まる」と話した。
共和党候補指名を確実にし、ホワイトハウス返り咲きを狙うトランプ前大統領は、国境対策を再び独自の選挙戦テーマにしている。トランプ氏は連邦の当局者に対し「戦争」状態にあると述べたり、不法移民について「わが国の血を汚している」と白人ナショナリスト団体のレトリックを借用したりしている。
ホワイトハウス、不法移民巡るトランプ氏の発言を非難
一方、 バイデン大統領は守勢に立たされている。国境対策のための法改正が議会で滞り、身動きが取れない状況にあると訴える。だが、移民問題でそもそもバイデン大統領を最も効果的に追い詰めたのはトランプ氏ではなく、テキサス州のアボット知事(共和)だ。