動きだした温暖化の国際交渉 見劣りする日本の姿勢/共同通信社・井田徹治
米国のオバマ大統領や日本の安倍晋三首相ら約125カ国の首脳らが参加して地球温暖化への対策を討議する「気候サミット」が国連で開かれた。2015年の合意を目指して進む地球温暖化対策の新たな国際枠組みに関する交渉を加速させることを各国代表が明言し、遅れがちな温暖化対策の進展を加速させるきっかけとなった。 中でも注目されるのは、中国と米国のという2大排出国の積極姿勢だ。 既に石炭火力発電からの排出規制強化などを柱とする強力な排出削減策をまとめたオバマ大統領は「米中両国に対策を主導する特別な責任がある」と強調、2020年以降の野心的な排出削減目標を来年3月末までに公表することを明言した。中国の張高麗・副首相も、自国の新目標を早期に公表するとした上で、総排出量を「可能な限り早期に減少に向かわせる」と宣言して注目された。 温暖化問題を、残された重要な課題の一つと位置付けるオバマ大統領にとって、自らリーダーシップを取って新たな国際枠組みをまとめることの重要性は大きい。中国にとって化石燃料使用量の削減につながる温暖化対策は、エネルギー安全保障や大気汚染対策という国内の重要課題の解決と表裏一体で、政策の中でもプライオリティが高まっている。両国の積極姿勢にはこんな背景がある。 2030年の排出量を1990年比で40%減らすという野心的な目標を検討している欧州連合(EU)も来年3月末までに新目標を公表することを明言し、ドイツやフランスが、発展途上国の温暖化対策を支援する「グリーン気候基金」にそれぞれ10億ドルを拠出することを表明するなどして存在感を示した。
日本はどうだろう。国内の温暖化対策は多くの先進国に比して遅れが目立ち、国際的な温暖化交渉の中での存在感も発言力も、低下が著しいのが現状だ。 安倍首相はサミット演説で、地球温暖化対策に取り組む途上国への支援策として2014年から3年間で1万4千人の人材を育成することを約束。技術革新で世界の排出削減に貢献する考えも表明したが、新たな削減目標の提出時期について明言することはなかった。先進国第2の経済規模を持つ国として、気候基金への貢献に対する期待は途上国の中に大きいのだが、この点についても「環境が整い次第、適切な貢献をする可能性を検討している」と述べるにとどまった。排出削減目標と資金拠出という二つの最重要課題で抽象的な演説にとどまったため、首相演説への評価はお世辞にも高いとは言えない。