アウシュビッツ式典に招待されないロシア 揺れ動く欧州の歴史認識
来年1月27日に開かれるアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所(ポーランド)の解放80周年記念式典に、ロシア代表が招かれないことになった。アウシュビッツ・ビルケナウ博物館が9月23日、SNSに投稿して明らかにした。同博物館のSNSによれば、同館のピョートル・シヴィンスキ局長は「これは解放の記念日。明らかに自由の価値を理解していないロシアの参加を想像するのは難しい」と説明した。 シヴィンスキ局長の「自由の価値を理解していない」という発言は、ロシアによるウクライナ侵攻を指しているとみられる。ウクライナのニュースサイト「ウクライナ・プラウダ」によれば、ロシアは2022年2月にウクライナに侵攻する以前は、毎年1月に開かれる解放記念式典に常に参加していた。ロシアによるウクライナ侵攻について、博物館は「野蛮な行為」と非難したという。 一方、第2次大戦でソ連が果たした功罪を巡る欧州の評価は揺れ動いてきた。85年前の1939年9月17日、ソ連軍がポーランドに侵攻した。前月に結んだ独ソ不可侵条約に基づくもので、両国は同月28日、ドイツ・ソビエト境界友好条約を結び、ポーランドを分割支配した。だが、防衛研究所の庄司潤一郎研究顧問によれば、スターリニズムとナチズムを2つの全体主義として位置付ける流れが欧州で固まったのは21世紀に入ってからだった。 欧州議会は2019年の決議で、ナチズムとスターリニズムという二つの全体主義国家が締結した独ソ不可侵条約によって第2次世界大戦が始まり、人類史上前例のない大量殺人や強制移住が行われたと位置づけた。それまでの第2次大戦に対する欧州の歴史的評価は「民主主義対ファシズム」というものだった。欧米諸国には、第2次大戦における同じ戦勝国として、欧州をナチズムから解放したというソ連の「大祖国戦争」史観への遠慮があったからだ。庄司氏は、「これは、民主主義対ファシズムというこれまでの第二次世界大戦に対する歴史的評価を大きく転換するものです」と指摘する。欧州議会が19年に評価を転換した背景のひとつには、14年にロシアによるクリミア強制併合もあったと言われる。