公営の結婚相談所、閉所相次ぐ マッチングアプリ普及、登録者の減少 相談者の高齢化も
下伊那郡松川町社会福祉協議会が運営を担う町結婚相談所が今月末で閉所する。マッチングアプリなどの利用が広がる中、同郡北部5町村でつくる結婚相談所「愛ねっと北部」(豊丘村)が来年3月末での閉所を決めたことで、単独での事業継続は難しいと判断した。県の結婚支援の情報拠点「県婚活支援センター」(長野市)は「公営の相談所の閉鎖はここ数年で聞いたことがない」としている。 【写真】5町村でつくる結婚相談所の事務所
登録者は40代以上男性が6割
松川町結婚相談所は1989年設立。現在の登録者は40人ほどで、40代以上の男性が6割を占める。近年は登録者の減少や高齢化で町内だけでの活動が難しく、愛ねっと北部の紹介を強化するなど、周辺町村を含めた広域的な出会いの支援を模索してきた。
マッチングアプリ普及で出会いが広域化
愛ねっと北部は、下伊那北部総合事務組合が2009年、登録者減少に悩む5町村の相談所をつなぐ狙いで設立した。独自に登録も受け入れ、21~23年には241人が登録・更新した。だが昨春から業務の在り方を検討する中で、唯一の相談員だった男性所長が昨年末に病気で勇退。マッチングアプリ普及でより広域的に出会える社会環境にもなった―と閉所を決めた。
愛ねっと北部は閉所後、広域的な引き合わせを県の婚活支援サイト「ながの結婚マッチングシステム」に委ねる方針。独自で受け入れていた登録者は5町村の結婚相談所に移管するとし、2月に各町村に通知した。
これを受け、松川町結婚相談所は対応を協議。結婚相談員から「単独での事業継続は難しい」との意見が出たことから、相談員の任期が切れる今月末での事業終了を決めた。登録者には近く文書で閉所を知らせる。
非営利の「安心感」あるも
県婚活支援センターによると、県内77市町村のうち67市町村が結婚相談所など支援事業に取り組んでいる。センター担当者は「公営サービスは、民間サービスで結果が得られない人が非営利の安心感を求めて頼る」とし、松川町結婚相談所などの閉所を残念がる。
一方、飯田市の民間結婚相談所「Leaf」代表の市沢志保さん(45)は「民間サービスの利用者でも『飯伊地域では同じ顔ぶれの人としか出会えない』と、活動範囲を中信や県外に広げる人は多い」とし、町村単位での支援の限界を指摘する。
他町村からも「相談者は歳を重ねた人や高齢の親が多い」(高森町社協)といった声も出ていた。下伊那北部総合事務組合の管理者として愛ねっと北部閉所の議論にも関わった松川町の北沢秀公町長は「世間の結婚観も15年前とは異なる。各町村で事業の必要性を議論する機会にしたい」と話している。