「せのぶら」妹尾和夫さん そば店のおかみさんと公演への思い
「現場に行かないと浮かばない」という郷田さんの希望で、同店があった自宅へ2人で訪ねたことも。「ご家族と話し、仏壇の横にあったおかみさんの写真と上っ張りを見たんです」。そこから、郷田さんは置いてあるもの一つひとつの物や人柄を家族に事細かに取材。すると、おかみさんの裏話などおちゃめな一面を聞き出せたという。 1970年代が舞台、屋号を「清七そば」に変えるなどして完成した脚本は130ページに。「これは3時間を超える量なんですよ」と妹尾さん。だが「それを4分の1にカットして郷田さんが怒るかな? と思ったけど『本当にありがとうございます』と言ってくれた」とうれしそうに語った。また、おかみさんには妹尾さんの母親の名前を付けたり、自身の両親のエピソードを加え、同店を知っている人でも想像ができない内容、また知らない人には新鮮に映るという。 妹尾さんは、けいこでおかみさん役の女優の動きを見ただけで、涙が止まらなくなることもあるという。「一生懸命、普通に頑張っている人の姿を取り上げ、これからも“ハートウォーミング”な舞台を続けていきたい」。様々な思いを胸に、30人の劇団員とともに節目の公演に臨む。