被災地の被害認定調査、遠隔地の応援自治体によるリモート判定普及へ…全壊・半壊など写真で判定
政府は、地震などの災害時に市町村が行う家屋の被害認定調査について、被災自治体に代わり、遠隔地からでも応援自治体の職員がリモートで判定できる仕組みの普及に乗り出す。能登半島地震で調査に役立った実績を踏まえ、2025年度に市町村向けの手引を改訂し、全国にノウハウを共有する。
被害認定調査は、被災した家屋の損壊状況を「全壊」「大規模半壊」「半壊」など6段階で判定する手続きで、罹災(りさい)証明書発行の前提になる。自治体の職員が一つ一つ現場を訪れて調べるのが一般的だが、大規模な災害の場合、時間を要することが多かった。
政府が普及を目指すリモート判定は、被災した建物の写真を送信することで、被災地から離れた応援自治体の職員も調査業務を手伝えるようにするもの。立ち入ることが難しい場所は、ドローンなども活用して、撮影する。写真をもとに、受信側が屋根瓦の落ち具合や柱の傾き、壁の損壊などを分析し、判定する。リモート判定にすることで、被災自治体は、宿泊先の確保など、支援受け入れ時の負担軽減が期待され、応援自治体にとっても、被災地に派遣する職員の数を抑えられるなどのメリットがある。
2024年1月に発生した能登半島地震では、大きな被害に遭った石川県珠洲市の調査業務を熊本市が支援し、被害認定調査では、約800キロ・メートル離れた熊本市役所の職員がリモートで約95件を判定した。東京都も都庁から、輪島市の家屋の調査をリモートで行った。調査を迅速化し、罹災証明書を早期に発行できれば、支援金受け取りや仮設住宅の入居、被災家屋の公費解体などを進めることが可能になり、被災者の生活再建に役立つことが期待される。
全国の自治体は、災害時に応援職員を受け入れる事態を想定した「受援計画」の策定に取り組んでおり、内閣府は来年度、能登半島地震の事例を盛り込み、計画策定の手引を改訂する方針だ。リモート判定は導入が始まったばかりなので、認知度が低いのが課題となっている。政府は、仕組みを全国に周知することで、南海トラフ地震など将来の巨大災害への備えを強化したい考えだ。