TikTok、米で児童プライバシー保護法違反か
米連邦取引委員会(FTC)はこのほど、中国発の動画投稿アプリ「TikTok」が米国の児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)に違反したと明らかにした。FTCは米司法省に訴訟提起の判断を委ねた。TikTokは今後、是正措置を求められる可能性がある。 ■ 過去にCOPPA違反で米政府と和解 FTCによると、TikTokが過去に米政府と合意した法令順守の状況を調査していた過程で、新たな違反が見つかった。ただ、違反の詳細については明らかにしていない。FTCはCOPPAの執行権限を持つ司法省に調査結果を報告しており、司法省は近く提訴するかどうかを判断する。 FTCは2019年にもTikTokがCOPPAに違反したと判断した経緯がある。親会社の中国・北京字節跳動科技(バイトダンス)は16年にTikTokの前身となったアプリ「抖音(Douyin)」を立ち上げた。同社は17年9月に抖音の国際版であるTikTokを立ち上げ、同11月に当時米国でも多くの利用者を抱えていた中国の動画投稿アプリ「Musical.ly(ミュージカリー)」を買収。18年8月にTikTokとMusical.lyを統合し米国利用者数を一気に増やした。 しかし、FTCは当時、このMusical.lyの商慣習を問題視した。児童がアプリを利用していることを認識しながら、保護者の同意を得ずに利用者のデータを収集したと指摘。19年、TikTokは児童プライバシー保護法違反として当時の最高額だった570万ドル(当時の為替レートで約6億2700万円)を支払うことで和解した。
■ TikTok「FTCの主張は過去のもの」 TikTokは今回のFTCの判断に反発している。同社の広報担当者は「FTCの主張の多くは過去のものであり、事実と異なる、あるいはすでに解決済みである。当社は児童保護に向けた取り組みを誇りに思っており、引き続きサービスの改善に努めている」と述べた。 FTCによるCOPPA違反認定は、TikTokが米国で直面している法的課題の深刻さを浮き彫りにしていると米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は報じている。24年4月にはバイデン大統領がTikTok規制法案に署名し、法が成立した。バイトダンスが期限内に米国事業を売却しなければ、米国でのアプリ配信を禁じるというものだ。TikTok側はこれが憲法違反にあたるとして米政府を訴えている。 ■ 米公衆衛生トップ「SNSに警告表示を」 米国ではSNS(交流サイト)における若年層保護の動きが広がっている。米国で公衆衛生政策を総括するマーシー医務総監はこのほど、米ニューヨーク・タイムズ(NYT)に寄稿し、青少年のメンタルヘルスへの害を知らせる警告ラベル表示をプラットフォーム企業に義務付けるよう米議会に呼びかけた。 同氏は、「警告ラベルだけで、SNSを安全な場所にすることはできないが、たばこの警告文で証明された通り、意識を高め、行動を変えることに役立つ」と説明。「SNSが思春期のメンタルヘルスに重大な悪影響を与えることを示す証拠が十分に蓄積された。医務総監による警告の表示をSNSプラットフォーマーに義務付けるときが来た」と強調した。 英ロイター通信によると、一部の米国の州では法制化の取り組みが進んでいる。 ニューヨーク州では24年6月、18歳未満のユーザーに対し保護者の同意なしに「中毒性のある」アルゴリズムによるコンテンツを表示することを禁じる法案が可決した。24年3月にはフロリダ州のロン・デサンティス知事が、14歳未満のSNSへのアクセスを禁止し、14歳と15歳に対しては、保護者の同意を義務付ける法案に署名した。
小久保 重信