andropとのコラボでも話題の、八戸の酒蔵を訪ねて
コロカルニュース
■八戸の港のシンボル、赤レンガの蔵から世界へ 八戸港や朝市で有名な館鼻岸壁の漁港からほど近くに、どっしりとしたレンガづくりの平屋があります。壁面に「男山」と書かれたその建物が〈八戸酒造〉です。大正時代に建てられ、「文化庁登録有形文化財」、「八戸市景観重要建造物」に指定されたという漆喰の土蔵と赤レンガの蔵は、八戸港河口の風景と相まってじつに絵になります。 【写真で見る】andropと八戸酒造のコラボ酒〈「androp×hassen」八仙 -乾杯をしよう 僕らはきっと よくやった–〉 ここに、「世界酒蔵ランキング」1位に輝いたことがあり、今年も、フランスの日本酒コンクール〈Kura Master〉や、イギリスの〈International Wine Challenge〉日本酒部門で金賞受賞と、国内外のコンペで常連の酒蔵があると聞いて訪ねました。 八戸酒造の屋号は「近江屋」といい、その名の通り、近江商人であった初代・駒井庄三郎が盛岡での商いを経て陸奥の地で酒造りの道に入り、明治21年に現在の湊町に移転し、〈駒井酒造店〉という名で代々日本酒を造り続けてきたといいます。創業の酒〈陸奥男山〉はその辛口具合が湊の男たちからも愛されてきました。 潮目が変わったのは1997年のこと。〈駒井酒造店〉は戦時中、昭和の政府が発布した「企業整備令」によって、八戸市および周辺の複数の酒蔵と合同会社として酒造りを行ってきましたが、現八代目当主庄三郎が1997年に合同会社を分離独立し、1998年に新ブランド〈陸奥八仙〉を立ち上げたのです。ただし、自社の蔵ではなく、休業していた八戸市内の旧八戸酒造の蔵を借りての再スタートと、厳しい環境下でした。 こうして現八戸酒造の新しい酒造りに取り組み、〈陸奥八仙〉が誕生。現専務の駒井秀介(ひでゆき)さんが入社した翌年の2003年からは、陸奥八仙もバリエーションが増え、酒質もひと言で言うなれば「味わいがきれい」なものになったといいます。フレッシュでフルーティーな酒が好きだった駒井さんが、「自分たちがおいしいと思う酒を造りたい」と生み出した酒は、日本酒に手をのばすきっかけを求めていた人たちのニーズにマッチしたのです。 そして、2009年には元の蔵である現在地に戻ることができたことで、蔵に活気と勢いが蘇りました。現在は父である8代目当主の庄三郎さん、秀介さん、杜氏である弟の伸介(のぶゆき)さんの兄弟が蔵を支え、若い蔵人たちも切磋琢磨しています。 特にここ数年は、外飲み需要の高まりや、インバウンドの需要、八仙の高名もあり、駒井さんは大忙し。 昨年11月には、有名店が軒を連ねる東京〈虎ノ門横丁〉にて、17店舗の参加店舗の料理に対する八仙の多種多様なマリアージュや、八戸の名物を用いたおつまみとのペアリングと飲み比べを楽しむ〈八仙祭り2023 in虎ノ門横丁〉を開催。「新規顧客の獲得と、八戸の観光PRに手応えを感じました」と駒井さんは話します。会場では、日本酒だけでなく、粕取り焼酎やスピリッツなども準備され、アレンジ自在、多彩なラインナップで会場を賑わせました。 八戸都市圏交流プラザ〈8BASE〉でのイベントなど、都市部で八仙熱が高まっても、蔵の根っこは八戸に。 「地域の特産品や文化との連携を重視し、幅広い層に訴求できる商品開発を行っていきます。また、蔵元主催のイベントだけでなく、他の蔵元や地域生産者とのコラボレーション、レストランでのペアリングディナーなど、多様なイベントを展開していこうと企画しています」