東京はシリコンバレーになれるのか?5月本格オープンの大規模スタートアップ支援拠点TIBが目指すもの
有楽町駅すぐに誕生した巨大なスタートアップ支援施設
東京都のスタートアップ支援拠点「Tokyo Innovation Base(略:TIB)」が5月15日にグランドオープンした。JR有楽町駅京橋口から徒歩1分という立地で約5500平方メートルもの広大な空間に展開される、まさに日本最大級のスタートアップ支援拠点となる。東京都がTIBを通して実現を目指すイノベーションビジョン「10×10×10」とは。そしてなぜ今、東京に、この規模の支援拠点が必要なのか。東京都の担当者に話を聞いた。 (話:東京都 スタートアップ・国際金融都市戦略室 イノベーション推進部 ノノベーション戦略担当課長・西川知伸さん) 東京からイノベーションを巻き起こすことを目指し、業種や分野に依らずスタートアップを対象に幅広い支援を行うTIB。2階フロアには大小さまざまなミーティングスペースや会議室、大型ビジョンを備えたステージ、月1回のピッチコンテスト受賞者による商品展示コーナー、カフェ利用もできるバーカウンターなどがあり、利用者がシームレスに行き来し、つながることができる空間となっている。3階にもサロンスペースが設けられ、より多くの“出会い”が生まれる場となりそうだ。さらにはテストマーケティングの場となる別館や、施設裏のガレージスペースなど、さまざまに活用できるスペースを備えている。基本情報を入力して会員登録をした後、無料で入場・利用できる。施設では、アクセラレーターやVC、弁護士などのエキスパートが連なるコンシェルジュによる相談受付のほか、多彩なイベントや月1回の公式ピッチコンテストなど、さまざまな企画・催しも開催する。 ―TIBは、どのような人を対象とした施設なのでしょうか。 「TIBの利用について業種や利用年齢といった制約は基本的に無いのですが、まず、主にスタートアップのシード、プレシードと呼ばれる立ち上げる前や立ち上げ後すぐの段階の方たちに来ていただきたいと思っています。この段階のスタートアップはリスクが高いとされ民間の投資を受けにくい傾向にあるので、そういったところを支援するのも行政の大事な役割です。同時に、VCやアクセラレーターだけでなく大学や自治体といった幅広い支援者に来ていただきたい。スタートアップが求めているのはやはり支援者とのつながりです。TIBではスタートアップと支援者の出会いを生む場となるべく、イベントやサロンスペースといった“つながる仕掛け”を作っていく他、TIBパートナーという制度を作りさまざまな企業・団体、大学にパートナーとなってもらい、スタートアップ支援を目的とした活動をともに行っていただいており、すでに200団体以上がエントリーしてくださっています。グランドオープン前ですが早くもリピーターとなってくれる方も多く、昨年11月にプレオープンして5カ月間で来場者は1万人を超えています。今後さらにTIBを利用するスタートアップと支援者が増えれば、より多くのつながりが生まれるはずです」 ―東京都ではさまざまな形で創業支援を行っていますが、新たにスタートアップ支援施設であるTIBを設立した背景を教えてください。 「2022年11月、東京都は“挑戦者が生まれ、世界から集まり、挑戦者を応援する東京へ”というスローガンを掲げ、新たなスタートアップ戦略〈Global Innovation with STARTUPS〉を発表しました。TIBはその戦略を実現するために設立された拠点となります。ご存じの方も多いですが、アメリカやイギリス、中国など、スタートアップの数はもちろん、ユニコーンと呼ばれる評価額10億ドル以上のスタートアップ企業の数も、日本より圧倒的に多い。実際に東京都でもフランスのStation FやシンガポールのBLOCK71といった、世界でも有数のスタートアップエコシステムを視察し交流も行っていますが、やはりスタートアップやユニコーンの数から、資金調達額の規模まで、日本とは圧倒的な差があるのを感じます」