【霞む最終処分】(37)第6部 リーダーシップ 福島県 国任せ問われる姿勢 現実的な打開策検討を
福島県が「苦渋の決断」として、東京電力福島第1原発事故に伴う中間貯蔵施設の建設を容認したのは2014(平成26)年8月だ。9年余りが過ぎた2023(令和5)年10月。福島市で講演した知事・内堀雅雄は法律で定められた除染廃棄物の最終処分期限を念頭に「2045年まで、たった22年だ」と踏み込んだ表現を口にし、周囲を驚かせた。 内堀が公の場で最終処分までに残された年数を明示し、危機感をあらわにしたのはこの時が初めてだった。今年3月に開かれた政府の復興推進委員会でも「あと21年しかない」と繰り返した。最終処分を実現するまでのプロセスが見えないまま、時間だけが過ぎていく現実と、環境省へのいら立ちとも取れる。 環境省福島地方環境事務所次長の成田浩司は「法定期限は常に意識している」とした上で、「県民の不安を代弁した大変重い言葉だ」と受け止める。 ◇ ◇ 環境省の中には県外最終処分への〝カウントダウン〟に言及した「内堀発言」を「(懸案だった)福島第1原発処理水の海洋放出が始まり、『次は除染土壌の処分の実現だぞ』という強いメッセージを発した」と解釈する向きもある。
環境省は2016年4月、県外最終処分に向けた方針などを盛り込んだ「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」をまとめた。工程表も併せて示したが、肝心の具体的な取り組みのスケジュールは2024年度末までしか記載されていない。 県は政府に対し、2025年度以降の明確な方針と工程を早期に示すように求めている。今年2月の福島復興再生協議会の席上、環境相の伊藤信太郎は「最終処分に向け、2025年度以降の進め方を示していく」と述べたが、どの程度まで具体化されるかは未知数だ。 ◇ ◇ 環境省、県とも「最終処分は国の責務」との認識は共通している。しかし、浜通りのある市町村の幹部は「言葉通りの国任せ。県の姿が見えない」と除染廃棄物の最終処分に対する県の関わり方への不満を漏らす。環境省内にも「県の存在感がない」と冷ややかな見方がある。問題が停滞する中、県の姿勢が問われ始めている。