中身ある感想を求められる“感想圧”がつらすぎる 出てくる言葉は「面白い」と「ヤバい」だけ
友人や仕事相手から「どう思う?」と感想を求められたとき、ありきたりな言葉しか浮かばず、答えに窮してしまう──。常日頃からどう準備しておくといいのだろうか。 AERA2024年11月4日号より。 【写真特集】大物がズラリ!AERA表紙フォトギャラリーはこちら * * * 「あれ? なぜだろう。何だか感想がうまく言えないな……」 そんな状況、心当たりのある人は多いのではないだろうか。 たとえばあるテレビドラマを見て、面白かった。私はいま、間違いなく心を打たれている。でも、「どう良かったか」を言おうとすると、何も浮かばない。 あるいは職場にて。上司から「どう思う?」と感想を求められた。「すごく良いな」とは思っている。でもそれ以上が出てこず、答えに窮してしまう──。 SNSでも、「求められてもうっすい感想しか言えない」「映画見て『ヤバかった』しか感想出てこない私って馬鹿?」といった類いの声を頻繁に見かける。 共通するのは、「感想言うのが下手な、だめな私」という自虐的なトーンだ。感想は、「うまく」言えなきゃだめ。言えないのは自分にその能力がないから。そんな“感想圧”とでもいうべき居心地の悪さを、多くの人が感じているようなのだ。 ■しどろもどろで愕然 たしかに、相手に響く「中身のある感想」を言うのは結構、難しい。心を動かされているのに、うまく言えない。なぜ、そんなことが起きるのか。 「私も、そんな経験があります」 こう話すのは、文学紹介者の頭木弘樹さん(60)。あるとき、大好きな脚本家である故・山田太一さんについて、「どういうところが好きなんですか?」と取材で聞かれたという。 「山田さんの作品は繰り返し見ているし、いくらでも話せるつもりでした。ところが、しどろもどろになり、うまく言葉が出てこない。愕然としました」 ただ、頭木さんはこの「好きなのに、理由がうまく言えない」のは、決してネガティブなことではないと考えている。 初めて「ブックトーク」に参加したときのこと。何人かが登壇し、自分にとって大切な本について紹介するイベントだ。