「選挙でオープンカー」なぜいない?「候補者は目立ってナンボ」とはいかない法律のカベ
乗車定員や看板の大きさ、街宣時間や場所にもルールあり
選挙カーの使用は、原則として候補者1人につき1台までと定められていますが、参議院議員選挙の比例代表選出の場合は2台まで使用が許されています。乗車できるのはドライバー1名と候補者本人、そしてウグイス嬢などの車上運動員4名の計6名までです。ただし、乗車定員が6名より少ない車種の場合は、定員を優先しなければなりません。また、車両に取り付ける看板のサイズにもルールがあり、縦273cm×横73cm以内と定められています。 選挙カーが使用できるのは、公示日に立候補届が受理された瞬間から投票日の前日までで、候補者の氏名を連呼できるのは朝8時から夜8時までと定められています。また、学校や病院、診療所などの施設前では静音保持義務が課せられており、これらの施設の近くで連呼行為を行うと公職選挙法に抵触する恐れがあります。 なお、夜8時以降も候補者の名前を連呼せず、看板を照らして走行する行為は認められています。 ちなみに、選挙カーは政党や候補者が所有しているケースは少なく、多くの候補者が選挙期間中にレンタカーを借りることで対応しています。ニッポンレンタカーやオリックスレンタカー、トヨタレンタカーなどでは、国政選挙の時期になるとワンボックスカーを中心に看板や音響機器を臨時に組み込み「選挙カーパッケージ」として候補者に貸出を行っています。その際は、選挙カーを熟知したスタッフが公費請求や警察への届け出を代行している模様です。 また、これら大手レンタカー会社とは別に、選挙カー専門のレンタカー業者も存在します。こうした会社のレンタカーは、一般的なワンボックスカーやコンパクトカーベースの車両とは別に、走行中も候補者の顔がよく見えるように車体後部をガラス張りにした特装仕様の選挙カーをレンタルしている会社もあります。
選挙戦によって適した選挙カーは異なる
選挙カーには、選挙戦や選挙区に応じて適した車両というものがあります。選挙には特定の有権者を対象に選挙活動を行う、いわゆる「地上戦」と、不動層など不特定多数の有権者を相手に選挙活動を行う、いわゆる「空中戦」があるとされますが、「地上戦」と「空中戦」では適した選挙カーも変わってきます。 地方における選挙は、俗に「ドブ板選挙」とも呼ばれる「地上戦」に軸足を置いたものが多く、田畑のあぜ道や入り組んだ住宅街でも小回りが利き、有権者から握手を求められた際に応じやすい軽自動車やコンパクトカーが適しているとされます。 一方、都市部での選挙は、無党派層を相手とする「空中戦」の比重が大きく、ターミナル駅などでの街頭演説で、多くの人の目に留まるよう、大きく目立つ車両が適しているそうです。 ちなみに、変わった選挙カーの例としては、元東京都議で過去に国政選挙や都知事選に立候補していたマック赤坂氏が、ロールスロイスの選挙カーを使用していました。 また、現・太田市議(群馬県太田市)でモータージャーナリストのマリオ高野氏は、愛車であるスバル「BRZ」を選挙カーとして用いていました。選挙カーは立候補者の名前と政策をアピールするとともに、いかに有権者の目に留まるかということも重要な要素となります。すなわち、どのような選挙カーを選ぶかというところから、すでに選挙戦は始まっていると言えるのかもしれません。
山崎 龍(乗り物系ライター)