支配下指名「77人中76番目」からの下剋上…日ハム“次世代エース候補”北山亘基(25歳)はなぜ「ドラフト8位」だった?《交流戦で今季4勝目》
大学の先輩・平野佳寿と「タイプは違うが夢が持てる」
「平野とは全く違うタイプですけど、それだけに夢が持てるんです、北山には」 2006年卒業の京都産業大OB・平野佳寿投手も、勝村監督の教え子になる。オリックスで先発として4シーズン、その後の8シーズンは抑えの切り札として156セーブを挙げた。メジャーではダイヤモンドバックス、マリナーズでプレーし、中継ぎとして48ホールドをマークすると、2021年オリックスに復帰。昨年までの3年間で86セーブを挙げているチームの絶対的守護神である。 「平野はキャッチャーのミットを動かさなかった。ストライクを投げられるコントロールの良さだけじゃないんです。狙ったコースと高さに、キャッチャーのミットを動かさずに投げられるコントロールが素晴らしかった」 余談になるが平野佳寿投手、大学4年生の秋、私は京都産業大グラウンドのブルペンでその全力投球を受けさせていただいたことがある。 「低めに構えてください!」という平野投手のリクエストに、しゃがんだヒザの高さで構えたミットに、そこよりさらに低いところから快速球がホップしてきて驚いた。 時計の文字盤で12時ほどの角度から投げ下ろしてくるのに、そのボールが、地面スレスレから、飛行機の離陸のように浮き上がってくる。 受けていて、「低めの高さ」がわからない。こちらの股間を直撃されそうな、それは、それは「怖いボール」だった。 「北山には、そこまでの精度はないかもしれませんけど、ホームベースの上でガッとホップしてくる強いストレートがあります。あれだけの強烈なストレートを投げられる投手は、そんなにいないはずです。そこには、私の新しい夢があるんです」
プロ球団の半分からは「いらない」という評価
北山亘基投手が、日本ハムに8位指名された時、すでに6球団が「選択終了」を宣言していた。つまり、少々失礼な言い方になるかもしれないが、プロの半分の球団からは「いらない」という評価を受けた投手が今、一軍ローテーションの一角として奮戦していることになる。 今年、4月20日のロッテ戦。わずか116球でプロ初完封を記録した北山投手。しかし、5月6日のソフトバンク戦では、先発の4回途中で6失点。新庄監督から「違う方の北山君が出ちゃったかな」というコメントが発せられた。 「好投の後でしたから、力んだか何かで、ゾーンが高くなったかな。ホップする球質の弊害が出たのかも。でも、彼は自分で考えられるヤツです。考えて、修正して、立て直してこられるヤツです」(勝村監督) 実際、その後は二軍落ちを経て交流戦で一軍マウンドに復帰。3週間ぶりの登板となったカープ戦では5回無失点の快投を見せ、今季4勝目を挙げた。 若い人の成長カーブというのは、決して、右肩上がりのまっすぐのラインじゃない。 いい時もあれば、そうでない時もあって、そんなギザギザのラインの底と頭が、だんだんと高くなってくれば、それでよい。 それが、若い人の「伸びしろ」というやつであり、勝村監督の「夢」であり、日本ハム・北山亘基投手の「隠し持った能力」なのである。
(「マスクの窓から野球を見れば」安倍昌彦 = 文)
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