【私の東京の味】甘糟りり子さんに聞いた、“ドレスダウン”の感覚で美食に出合える3軒(後編)
『びおら』旬の素材に手をかけ、心を尽くす、家庭料理の極み。
席について耳を澄ますと、心地いい音が聞こえます。特別に集音した、庖丁で野菜を刻む音や茶釜が沸く茶室の音色はオーナーの後藤すみれさんにとって、懐かしい日常の音。 「共同オーナーで母の後藤加寿子は茶道の家元に生まれ、料理研究家として家庭料理を伝えてまいりました。母の料理を次世代へ、という思いで、『びおら』を始めました」。献立を加寿子さんが監修し、キッチンスタッフが再現します。炊きたてのご飯、出汁が香る味噌汁、揚げたてコロッケ……。 「『びおら』では高級な食材も珍味もほとんど出ません。出汁をきちんととり、旬のものに手をかけて作るだけ」 日日の料理こそが、本物の贅沢だと教えてくれるお店です。 びおら 住:港区南麻布4-12-4 プラチナコート広尾1F 営:11:00~14:30 18:00~22:00 休:日、祝 月曜の昼 予:夜は前日までに予約が望ましい
PROFILE
甘糟りり子/あまかす・りりこ 1964年生まれ、鎌倉市在住。90年代から東京や湘南のレストランの変遷をエッセイや小説で発表。最新刊に『私、産まなくていいですか』(講談社文庫)。
『クウネル』2024年 5月号掲載 写真/木寺紀雄、取材・文/田村幸子
クウネル・サロン