政府はなぜ今「中央省庁の地方移転」を進めるのか
各自治体が研究機関誘致による産業育成などの効果に期待する一方、中央省庁の移転希望は、文化庁(京都)、消費者庁(徳島)、中小企業庁(大阪)、観光庁(北海道・兵庫)、気象庁(三重)、特許庁(大阪・長野)、総務省統計局(和歌山)の7機関8道府県の提案にとどまった。 「まち・ひと・しごと創生本部」事務局では、移転の意義、国の機関としての機能維持、財政負担などの観点から提案を精査し、中央省庁以外の提案については、具体的検討を進める22機関を絞り込んだ。中央省庁については、文化庁を京都府に、消費者庁を徳島県に移す案が有力だと報じられている。
「国会対応はどうする?」中央省庁からは根強い反対
省庁の地方移転計画が政治主導で進む中、移転対象とされた中央省庁は強い反発を続けている。各省庁は「国会対応や東京に本部がある業界団体との調整、緊急時の官邸との連携が難しくなる」として東京からの移転に難色を示す。 消費者庁の移転を提案している徳島県は、テレビ会議などを導入すれば、東京でなくても業務が可能だと提案した。これに対し消費者庁は「緊急時の危機管理や国会対応、国民生活センターが担う相談処理や事業者団体との交渉などがテレビ会議でできるのか」と疑問を呈している。 文化庁の移転を提案した京都府は「文化庁の国会の委員会出席回数は年20回程度なので(京都でも)対応可能だ」と主張。一方、文化庁は「質問対応件数年間約250件、対面での説明要求年間約500件、議連や党の会議出席で週3.5回対応しているので、京都府の言う『年20回程度』で済むとは到底言えない」と反論している。 このような状況で、本当に中央省庁の地方移転は可能なのだろうか。まち・ひと・しごと創生本部の担当者は「情報通信技術(ICT)を活用して業務が可能なのか、地方で国会対応などが可能なのかについて、今まさに論点を整理して詰めているところだ」と答えた。政府は今年度末の3月までに、移転対象となる中央省庁などの政府機関を決定する予定だ。 (中野宏一/THE EAST TIMES)