【リバプール分析コラム】中盤の“第4の選択肢”は遠藤航ではない。スロット体制で新たなキーマンになり得る選手とは
プレミアリーグ第8節、リバプール対チェルシーが現地時間20日に行われ、2-1でホームチームが勝利した。この試合で大活躍した”ある選手”の台頭によって遠藤航の立場はますます厳しいものになっている。(文:安洋一郎) 【動画】リバプール対チェルシー ハイライト
●リバプールが単独首位をキープ アルネ・スロット新体制のリバプールの快進撃が止まらない。 開幕戦でマンチェスター・シティ相手に敗れて以降、6試合で5勝1分と好調を維持していたチェルシーに対して2-1の勝利を収め、プレミアリーグでの単独首位をキープしている。 この試合で勝敗を大きく分けたのが、最終ラインの完成度の差だ。 右からトレント・アレクサンダー=アーノルド、イブラヒマ・コナテ、フィルジル・ファン・ダイク、アンドリュー・ロバートソンというベストなメンバーを組めたリバプールに対して、チェルシーはマルク・ククレジャとウェズレイ・フォファナを累積警告で欠いた中での試合となった。 主将のリース・ジェームズがシーズン初出場を飾り、彼の復帰によってマロ・ギュストが左サイドバック(SB)では今季初先発。2人のレギュラーがいないだけでなく、他の選手も久々の試合や慣れないポジションでの起用となり、チェルシーの最終ラインの急造感は否めなかった。 フォファナの代わりに先発起用となったトシン・アダラバイヨも無理に縦パスを出そうとする意識が強すぎるためか無駄なロストが多く、全体的にビルドアップでのミスが多かった。 この浮足立つチェルシーの最終ラインに対して、勝負所で圧力を掛けたリバプールが前半から優位に立った。先制点のPK奪取やその前後にあったチャンスメイクのほとんどが、相手のビルドアップでのミスを誘ってのショートカウンターから生まれている。 その中で大車輪の活躍を披露したのが、リバプールのカーティス・ジョーンズである。 ●チェルシー戦でキーマンとなったジョーンズ ユルゲン・クロップ前体制からスロット新体制になって変わったのがスタメンの固定化だ。 オランダ人指揮官の下では、サブとスタメンの序列がハッキリしており、中でも中盤はプレミアリーグ開幕から6試合続けてライアン・フラーフェンベルフ、アレクシス・マクアリスター、ドミニク・ソボスライの3人が先発起用されている。 一方のカーティス・ジョーンズは、開幕直後に怪我を負ってしまいスタメン争いで遅れをとっていた。それでもコンディションを戻して以降は途中出場からもインパクトを残せるようになり、クリスタル・パレスとの第7節ではソボスライに代わってプレミアリーグで初先発を飾っていた。 今節は前節と違い、南米帰りのマクアリスターに代わってスタートから起用されたが、その中でアルゼンチン代表MFの不在を感じさせないパフォーマンスを見せた。 この試合でスロット監督からジョーンズに与えられた役割は、チェルシーのコール・パーマーを常に監視することだった。 トップ下のポジションから右に降りてゲームコントロールすることが多いチェルシーのキーマンに対して、ジョーンズはマンツーマンで対応。ビルドアップの局面で簡単に前を向かせないだけでなく、25分には彼がボックス内で放ったシュートに身を投げ出してブロックした。 この守備に対してスロット監督は試合後の会見で「コール・パーマーをコントロールするのは難しい仕事だった。 彼にはクオリティがあるから、守るのはとても難しいね。それを今日のカーティス(・ジョーンズ)は見事にやってのけた」と賛辞を送っている。 パーマーをゲームから消しただけでもMVP級の活躍なのだが、この試合のジョーンズはそれだけにとどまらなかった。 ●与えられたタスク以上の仕事を披露 ジョーンズは今シーズンの開幕前にアメリカで行われたマンチェスター・ユナイテッドとのプレシーズンマッチ後に「僕はボックス内に入ってゴールを奪うことができるし、ユナイテッド戦でのゴールはタイミングが完璧だった。深い位置でもプレーできるけど、高い位置でもプレーできるよ」と振り返っていた。 自らが語ったこの“特長”を、今節チェルシー戦でも示した。クロスを上げる位置こそ違ったが、チェルシー戦でも右サイドからのボールに対してボックス内に飛び込んでゴールを決めたのだ。 それもオフサイドポジションにいたダルウィン・ヌニェスがいたことによって足が止まったチェルシーの守備陣の隙を突いたアクションで、同点に追いつかれた直後の51分に試合を決める勝ち越しゴールを奪ってみせた。 29分に決まったサラーのPKもボックス内でプレーしたジョーンズが獲得したもので、シーズン開幕前に「深い位置でもプレーできるけど、高い位置でもプレーできる」と、宣言した通りの活躍だった。 この台頭によってジョーンズはスロット監督の中で、中盤の「第4の選択肢」になっており、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)との過密日程が続く中でクオリティを落とさないための重要な存在となるだろう。 次なるミッションは、今季ウェストハムとのリーグカップ以外の全試合(代表戦も含む)で先発出場を飾っているフラーフェンベルフの代役を務めることができるかどうかだ。 仮に彼がオランダ代表MFの穴を埋めることができるとなれば、チェルシー戦でも出番がなかった日本代表MF遠藤航の立場はさらに厳しいものになる。タイプとしては狭いスペースでのボールコントロールやターンを得意としているジョーンズの方が、指揮官がアンカーに求める能力にマッチしていると言わざるを得ないだろう。 (文:安洋一郎)
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