ヤマト運輸“サービス力低下”を招いた経営陣の誤算。現場&顧客を軽視、“120億円訴訟”日本郵便との関係は泥沼化へ
2023年9月に「3万人との契約打ち切り」
ヤマト運輸は2023年9月に配送業務委託をしていた3万人との契約打ち切りを決定します。日本郵便に委託することが決まったメール便、薄型荷物の配送を委託していた個人事業主が中心。ヤマトは日本郵便との協業体制が上手く行くものと確信したのか、本格的な移行を待つ前に契約解除を決めてしまいました。 2024年4月のクロネコDM便・クロネコゆうメールの取扱件数は前年同月比で12.9%。9割近く減少しました。こちらは順調に委託が進んでおり、予定通り日本郵便に全量の配達を委託しています。 一方、ネコポス・クロネコゆうパケットの委託はスムーズに進みませんでした。 クロネコゆうパケットは、ネコポスと比べると配送日がネコポスプラス1日。これはヤマト発送営業所から日本郵便の引受地域区分局に届けられ、更に配達地域区分局から郵便局、届け先と経由地が増えるためです。 また、メルカリなどの個人間取引のサイト利用者は、クロネコゆうパケットの契約ができなくなりました。法人や個人事業主に限定されたためです。 確かにクロネコゆうパケットはネコポスと比べると割安な部分もあります。しかし、利便性や迅速に配送できるというメリットを失いました。最も重要な顧客にとって、日本郵便と協業体制を敷いたヤマト運輸を使うメリットが少なくなったのです。これがヤマトの業務効率化を進めた経営陣の誤算でした。
「こねこ便420」は日本郵便への宣戦布告?
ヤマトホールディングスは2024年12月18日、ネコポスからクロネコゆうパケットへの切り替えに伴い、配送日数が伸びていることを認めたうえで、日本郵便に対して配達委託スケジュールの見直しに係る申し入れを行い、協議を重ねていることを明らかにしました。配達委託をすべて停止することを打診したという、一連の報道を牽制しています。 しかし、日本郵便の執行役員・五味儀裕氏はオンライン会見にて、ヤマトによる一方的な事情で誠意ある協議がなく、約束が否定されたと語っています。 そもそも、ヤマトは2024年8月に「こねこ便420」を開始していました。これはクロネコゆうパケットの料金のわかりづらさを解消し、配送期間の短縮を目的としたものであることは明らか。協業相手である、日本郵便への宣戦布告とも言えるサービスでした。