『ガンダム』Gファイターとコア・ブースターがごっちゃになる…なって当たり前だった!
Gファイターの残したいくつかの功績
Gファイターが歴史の闇へ消えかけた原因とは、TV版『機動戦士ガンダム』を再編集した劇場版に登場しなかったからです。もっとも編集のミスで『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』に2か所ほど登場していました。 そしてGファイターの代わりとして『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』から登場したのが「FF-X7-Bst コア・ブースター」です。完全な入れ替わりの形で、パイロットもセイラとスレッガーでした。 このコア・ブースターとの差し替えは一説によると、劇場版では作風をよりリアルにするためだったそうです。つまりGファイターの運用法が、リアルには見えなかったからなのでしょう。もともとGファイターは玩具会社からの指示で登場することになったメカでした。それゆえにガンダムとのプレイバリューを考え、劇中のような形になったわけです。 その後、続編となる『機動戦士Zガンダム』開始時、ストーリーは劇場版三部作からつながったものと公表されました。これによって劇場版三部作が正史扱いとなり、Gファイターの存在は抹消されたに近いものとなります。 ところが、その続編となる『機動戦士ガンダムZZ』の主人公機「MSZ-010 ZZガンダム」の存在がふたたびGファイターに光を当てました。なぜならZZガンダムはGファイターのシステムを取り入れたMSだったからです。 もともとGファイターに限らず、TV版の設定は消えたものではありません。とはいえ、当時の感覚では、今でいうマルチバースという概念はなく、複数の異なる設定のどちらが正しいのか白黒つけるべきであって……という風潮にありました。 これが今では、公式にもGファイターとコア・ブースターは同時に存在していたという設定になり、さらにコア・ブースターはGスカイを参考に開発されたという後付け設定がなされています。 実はこのGファイターが、のちに影響を与えたことがいくつかありました。そのひとつが戦闘機の上にロボットが乗って空中戦をするという演出です。それ以前にも皆無というわけではありませんが、このスタイルを定番化させたのはガンダムとGファイターでしょう。 さらに、ロボットアニメ中盤でのパワーアップ展開は、ほかの作品でも見られたものの、新型メカが登場し、それがオモチャ化するという展開はそれほど多くありませんでした。このパターンを定番化させたのがGファイターだったわけです。 いわゆるガンダムと同梱された「DXセット」は好評で、当時のクリスマス商戦では高評価を受けていました。この好評ゆえにスポンサーである「クローバー」は、後番組となる『無敵ロボ トライダーG7』『最強ロボ ダイオージャ』でも同様に、中盤以降にプレイバリューのあるオモチャを販売しています。 この「1年間のロボットアニメ中盤で新型メカを出す」というパターンは、さらに後続番組である『戦闘メカ ザブングル』以降で「2号ロボ」という概念を生む土台となりました。富野由悠季監督の「2号ロボ登場後の1号ロボのパイロットはヒロイン」という定番の展開も、その元祖がセイラだと考えると納得できるでしょう。 これがさらに飛躍すると、スポンサーは変わるものの同時間枠で放送された「勇者シリーズ」でよく見られる、1号ロボと2号ロボの合体形態、通称「グレート合体」の始祖も、Gアーマーだと考えられるかもしれません。かなりのこじつけでしょうか。 一度は日陰の道を歩かされたGファイターが、こうして振り返ってみると多くの功績を残したといえるかもしれません。筆者的には単純にカッコよく思えて、昔から好きなメカのひとつです。
加々美利治