趣里“亮子”の“買い物姿&紅茶”の遊び心ある演出がありつつ、圧巻の法廷劇へ<モンスター>
趣里が主演を務める「モンスター」(毎週月曜夜10:00-10:54、フジテレビ系/FOD・TVerにて配信)。12月2日放送の第8話は、近年話題の闇バイト問題に隠されていた検察側の意図を感じ取った亮子(趣里)の法廷での逆転劇が展開。途中には遊び心ある演出で盛り上げた。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】法廷で涙ぐむ亮子(趣里) ■異色のリーガル・エンターテインメント 本作は、“常識”にとらわれず、“感情を排除”して相手と向き合う得体のしれないモンスター弁護士・神波亮子(趣里)が主人公。時に法が追いついていない令和ならではのさまざまな問題と向き合い、まるでゲームのように法廷闘争に立ち向かう、異色のリーガル・エンターテインメントだ。 物事の本質を見抜き、独自の解釈のもと裁判を掻き回す型破りな“モンスター”だからこそ、人間が訳もなく悪意に満ちてしまう、“モンスター”になる瞬間を見逃さず、冷静に事件を解決に導き、周囲の価値観を覆しながら影響を与えていく。 亮子に振り回されることになる東大法学部卒の若手弁護士・杉浦義弘をジェシー(SixTONES)、失踪中の亮子の父・粒来春明を古田新太、亮子と杉浦が所属する法律事務所の所長・大草圭子をYOUが演じる。 ■局を越えたドラマのオマージュに視聴者沸く 第8話で亮子たちに依頼したのは、強盗致傷の罪で逮捕された16歳の少年4人のうちの1人である栗本颯(坂元愛登)の両親。谷口(林裕太)らほかの3人が颯の指示で犯行に及んだと自供するなかで、両親は学校でも優等生だった息子が、素行の悪い友だちにだまされたと信じ込んでいた。 まずは調査する亮子のシーンの演出が注目された。最初は被害者の橘清美(石野真子)に聞き込みに行ったとき。「ひとつだけいいですか?」と亮子が人差し指を立てて質問を始めたところだ。もしかして…と思っていたところで、事務所に戻った亮子がティーポットを高い位置からカップに注いだ。 “相棒”の杉浦が「なになになになに?どうしたの?」と驚くと、「昨日ドラマで見た」と亮子。「…もしかして、バディもの?」と聞き返す杉浦に、亮子はにっこり。 紅茶のシーンは予告から注目されていたが、まさかの会話でも暗示される演出。亮子を演じる趣里の父・水谷豊の代表作であるドラマシリーズ「相棒」(テレビ朝日系)で水谷演じる右京のおなじみの紅茶の注ぎ方で、特徴的なせりふに「ひとつよろしいですか」があるのだ。 さらに続いたのが、亮子が橘のパート先であるスーパーに変装して調査に行くシーン。品出しする従業員の鼻歌が笠置シヅ子さんの「買物ブギー」の一小節で、その後ろに現れた亮子の姿はその歌を歌っていたときの笠置さんの髪型と衣装に似ていた。 いうまでもなく、趣里が主演した連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK総合)をイメージしたもの。同作で趣里は笠置さんをモチーフにした福来スズ子を演じたが、スーパー従業員への聞き込みで“鈴カステラ”を差し出しているのもニクイ演出だった。 これらの演出に「局を越えてまさかの親子繋がり」「局を越えての相棒ネタ!!」「久々に福来スズ子に会えたよ」「右京さんネタとスズ子っぽい感じで、うひゃあああってなった」「今日は神波先生に、右京さんや福来スズ子が降臨してる(笑)」と視聴者から大きな反響があった。 ■亮子が“でっちあげ”で対抗する圧巻の裁判 さて事件はというと、検察側が指摘する闇バイト組織との関連への疑いと、颯の住居に侵入しても窃盗はしない“闇バイトごっこ”をしただけで、計画も谷口がしたのだと話す、対立する様相があった。 亮子は、事務所にまた突然やって来た粒来との会話から、検察側が、闇バイト組織の指示役である“キング”と呼ばれる男を起訴するために颯以外の3人にでっちあげの証言をさせていると見抜く。 粒来と今回の担当検事は旧知の間柄で、亮子が粒来の娘であると分かった検事に対し、「その弁護士、あんまりナメないほうがいいかもな」とくぎを刺した粒来。第6話での親子対決では圧倒的な力で亮子を負かした粒来だが、亮子の力は認めているのだ。 そのとおりに亮子は圧巻の法廷劇を見せた。まず亮子がつまびらかにしたのは、被害者であった橘のうそ。実は橘が副店長をしていたスーパーで颯もバイトをしていて面識があった。ただ、本当の証言をしなかったのは、橘が職を得るために現実にはいない妹の戸籍を作り、その妹になりすましていたからだった。 検察が知らないその事実を明かした亮子は「こちらに都合のよいストーリーを作り上げる。使える材料は全部使ってでっちあげる」という計画を実行。橘は、スーパーでのいたずらを注意した仕返しのいたずらだと証言した。実際にスーパーで素行を注意されたのは颯を除く3人だったが、罪をなすりつけられようとしている颯を救うための“ストーリー”だ。 亮子は裁判員裁判であることを利用し、臨場感で迫っていった。年齢がいくにしたがって難しくなる就労問題の悲しみに同情しているかのようなうそ泣きをして裁判員となっている一般人のもらい泣きと共感を呼んだ。 検察側の「異議あり」に対して、「事件の背後に隠れた動機を明らかにしていくことは社会の課題を浮き彫りにすることでもあります」という亮子の言葉はすばらしいものだったが、続いた「裁判は、単なる勝ち負けのゲームじゃないんです!」に「えっ」と驚いた杉浦には、これまでの亮子を知る見ている側としてもクスっと笑ってしまった。 その勢いで検察側がこの事件を利用しようとしているのではないかとも言った亮子は、見事に“ゲーム”に勝利して、颯は無実となった。 闇バイト組織を入口に、若者たちの素行や悩み、検察側の問題、就労問題、戸籍偽造と何層にも重ねる構成の面白さがあった。そんななか今回登場した“キング”の存在が鍵となり、粒来も絡むクライマックスへと亮子が進んでいくようで、ますます目が離せなくなった。 ◆文=ザテレビジョンドラマ部