【テレフォン人生相談】「お若いなあと。ビックリですよ」ディレクターが最も印象に残った「80代女性」の恋愛相談とは?
番組から影響を受けたことはない。「私もこうしようとか思うことはないです」
「最近、女性の相談で多いのは、70~80代の母親が、家族と疎遠になっているというもので、特に、娘と音信不通だと悩む方が増えています。逆に、娘世代は親の介護が多い。毒親で、幼少期に散々傷つけられたのに、そんな親でも介護をしなきゃいけないのか、と。高齢化社会ゆえの問題でしょう」 前出の宅野さんはこう語ると、「しかし、いっぽうで元気な高齢者も結構多い」と高揚した様子で話を続けた。 「12月9日からの1週間は『これが私の重大事件2024』と題し、今年を象徴する内容を放送していますが、夫に先立たれた80代の女性が、親子ほど年齢の離れた男性と交際し、性に目覚めたが異常だろうかという相談がありました。 過去にも、マッチングアプリを使っているという70代の女性もいれば、80を過ぎた夫の浮気を心配しているという方もいて、みなさん、まだまだお若いなあと。ビックリですよ」 また、電話の進化によっても相談内容が変化してきたという。番組が始まった’60年代の半ば、一般家庭において、100人当たりの加入電話普及率は7.5%ぐらい。その後、黒電話の時代が来て、追ってコードレスフォンが出てきた。 「すると、家族と離れた場所から相談の電話ができるようになりました。次に携帯電話の時代になると、家以外でも電話をかけられることで、男性からの電話相談、特に妻の不倫の相談が増えました。 そして、スマホが一般的な現代では、それまでは相談に使うツールだった電話が、相談の原因になっている、ということが増えて。SNSのやりとりを妻に見られて浮気がばれたとか、日常茶飯事」 高齢者もスマホやネットを使いこなす時代だ。ラジオの役割についてどう考えているのだろうか。 「パーソナリティの加藤諦三さんの格言に〈話すというのは、情報を伝えることではない。情緒を伝えることだ〉という言葉があります。この情緒で伝えるというのが、音声メディアの使命じゃないかなと思いますね。情報を伝えるだけでいいならAIで十分なんです」 さらに、悩みに隠された真の動機を丁寧に解き明かすのが『テレフォン人生相談』の役割だという。 「相談者はなかなか本心を言いません。それは、自分の本心に気づいていないからです。そこを優しく聞き出すパーソナリティもいますが、今井さんは、また違った視点で相談者と向き合い、相手のためだと思えばキツいことも言う。両極端だからいいんですよ。 今井さんは数々の日本初をやってのけた、女性の憧れ的存在。彼女に話を聞いてもらえるのがうれしいという方も多いと思います」 医師としての知識や山で身につけた“臨機応変さ”を人生相談で生かすことができた、と今井さん。 「山では、状況を瞬時に判断して動かなければならない。そういう意味では、人生相談は、相談者の話を聴いて、そのとき考えたことを話していくので、柔軟な対応が不可欠になってくるんです」 自然に親しむ生活はいまも変わらず。長野県白馬村では、山の仲間とともに手作業で、無農薬・有機栽培の米を作り続けている。 「山はね、最近はもっぱら森林浴です。人間は森林のなかにいると健康になるぞ! ということをアピールしていきたい。それが、今後も挑戦していきたいことです」 いまの幸せは、健康でやりたいことがやれること。ところが、「ちょっと長く生きすぎちゃったかな」と今井さん。 「老後どうするかとかまったく考えていない。まあ、どこまで行けるかなあという感じですね(笑)」 ここで、この番組が自分自身の考え方や生き方に影響はあったかどうか聞いた。 すると、間髪をいれずに「ない」と答え、「私もこうしようとか思うことはないです」ときっぱり。それでは、なぜ、人生相談を続けてこられたのだろうか。 「人のいろいろな話を聞くのは大好きなのよ(笑)。人生相談には、本を読むよりもずっとたくさんの人生のエピソードがあって、それに対するアイデアを出したとき、相手の方の声が元気になるとうれしいです」 そして、今日もいつもの挨拶から『テレフォン人生相談』は始まる。 「こんにちは、今井通子です。人にはなかなか言えない相談ってあるものですよね。電話一本くだされば参考になる意見、心がほぐれるお話ができるかもしれません。あなたのご相談は、同じ悩みを持つ方の支えになるはずです」 (取材・文:服部広子)
「女性自身」2024年12月24日・12月31日合併号