もしかして、債券バブル? 利回り8%アルゼンチン100年債に買い注文殺到
目下、米国の連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切っているにもかかわらず、そのほかの先進国中銀の緩和的な金融政策の影響などから、日本を含めた世界の国債金利が低位で安定しています。日本の10年国債は0%、ドイツは0.5%、フランスは0%台後半、英国は1%強、そして断続的な政策金利の引き上げを実施している米国ですら2%台前半といった具合です。 こうした国債金利の低位安定を債券バブルとして警鐘を鳴らす向きもあります。現状の長期金利が、適正水準から離れているかを議論するのはとても難しいのですが、中央銀行の行き過ぎた金融緩和が債券バブルを招いているという主張に一定の納得感があるのも事実です。(解説:第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
債券市場は加熱気味 注意すべきこととは?
そして最近は、債券バブルを意識せざるを得ない出来事がありました。 それはアルゼンチンが利回り8%弱で100年国債を発行したことです。しかも、30億ドル弱の発行額に対し、3倍程の申し込みがあったと言います。アルゼンチンといえば、過去100年に6回も債務不履行を起こしていることが知られており、お世辞にも信用力が高いとはいえません。 しかも、わずか4年前の2013年には、国際通貨基金(IMF)から統計の改ざんについて是正勧告を受けたばかりです。当時、アルゼンチン政府は物価連動債の利払い費を抑制するために、消費者物価統計を実勢よりも低めに報告した疑いがもたれていました。これは事実上の返済拒否ですから、投資家の信用を失墜させることになりました。このように何かとお騒がせの国が、わずか8%の金利で100年という超長期間の資金調達ができたことはあらためて驚きです。このアルゼンチン100年国債のほかにも、ジャンク債と呼ばれる信用力の低い債券の利回りが著しく低下するなど、債券市場の過熱感を意識させる動きがあります。 注意が必要なのは、今後欧州中央銀行(ECB)や日銀など主要先進国の中央銀行が金融緩和を終了したときです。現状では、信用力の低い国や企業も低金利でおカネを調達できていますが、金利が上昇した局面では、こうした主体が思わぬ形で資金ショートに直面する可能性があります。金融市場の波乱になりうる要因として認識しておくべきでしょう。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。