房州切子の製作ピーク 唯一の職人中村さん 今年は530個を見込む 館山(千葉県)
新盆を迎える家庭で飾られる盆灯籠「房州切子」の製作がピークを迎え、安房地域で唯一の職人、中村俊一さん(48)=館山市那古=が忙しなく作業に当たっている。 房州切子は、立方体のスギの木枠に格子模様にくりぬいた紙を貼り付け、紙の装飾や造花などで飾ったつり灯籠。白と金の2色の種類があり、白は千倉など南房総市、金は北条を中心に館山市で需要があるという。 中村さんは、東京都内でデザイン関係の仕事をしていたが、子どもの誕生を機に地元にUターン。それまで唯一の職人だった故・行貝實さんに弟子入りし、伝統の技を引き継いでいる。 製作は、木枠となるスギの製材から紙の細工まで全40工程あり、造花以外は全て手作業。材料づくりは前年9月ごろから着手し、注文を受けて5月ごろから本格的に作業に取り掛かる。 今年は、13日時点で約480個の製作を見込んでいるが、昨年は見込みを上回る注文があり、材料が不足したことから、最終的に530個製作できるよう準備。 中村さんは13日、一つ一つ丁寧に紙を貼り合わせ、作業に精を出していた。「材料価格の高騰や仕入れ先が廃業するなど、難しい面もあるが、地域で続く新盆の大事な房州切子の製作を続け、伝統をつないでいきたい」と中村さん。昨年末には、県内から房州切子を学びたいという弟子も受け入れ、技術の伝承にも力を入れている。 房州切子の問い合わせは、中村さん(0470―27―4731)へ。