<SHOGUN 将軍>雅楽と日本伝統音楽で歴史的なエミー賞ノミネート、作曲家の石田多朗がアレンジ秘話を語る
アメリカの優れたテレビドラマ、番組を表彰する「第76回エミー賞(R)」各賞のノミネートが発表された。真田広之が主演とプロデュースを務めるドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」が、ドラマ部門で最多となる25部門に選出され、音楽アレンジを担当した石田多朗はテーマ曲賞と作曲賞の2部門でノミネートしている。 【写真】日本伝統音楽家たちが参加したレコーディングの風景 ■雅楽や日本伝統音楽をベースにした音楽として、歴史的なエミー賞ノミネート 日本人がエミー賞の音楽部門2部門(テーマ曲賞と作曲賞)にノミネートされることは非常に稀なことだ。さらに、日本の伝統音楽や雅楽が関わる音楽がノミネートされたのは歴史上初めてであり、国内外から注目が集まっている。 同作の劇中音楽とテーマ曲の編曲やレコーディングを担当したのは、栃木県那須町在住の作曲家・石田多朗。東京藝術大学で音楽を学び、美術展の空間音楽や大手企業のPR映像に使用する楽曲など幅広い制作活動に携わり、10年前から雅楽の作曲を始めた。「SHOGUN 将軍」の音楽について「物語とともに、それを重層的に仕立てている音楽にも注目してほしい」とコメントをしている。 ■約2年を要したサウンドトラック制作 石田によると「SHOGUN 将軍」のサウンドトラック制作は約2年にわたって続いた。まず、アカデミー賞受賞作曲家でもあるアッティカス・ロスをはじめとするロサンゼルスの作曲チームから依頼を受け、栃木県那須町にあるスタジオで採譜や編曲・アレンジを行った。 雅楽楽器、尺八、声明(お坊さんの声)、胡弓、法螺貝、三味線、唄など、レコーディングには総勢で数十人にわたる日本伝統音楽家が集結し、ロサンゼルスにいるアッティカス・ロスらとリモートでやりとりをしながら、レコーディングやアレンジの作業を進めた。石田は「アッティカス・ロスたちは日本の伝統音楽の常識に良い意味でとらわれていなかった」と振り返っている。 さらに石田は、アレンジについて「シンプルな古典曲の旋律だけを使うことで、楽器の最も朗らかな音を表現することにこだわった」と話している。制作過程では、時代性の異なる楽器を織り交ぜたり、拍と音のズレをあえて残したりするなど、定型を打ち破る発想が次々に取り入れられた。 今回のエミー賞へのノミネートは日本の伝統音楽や雅楽が世界にも通じる音楽であることを証明するものとも言える。最終的な受賞結果は2024年9月16日に発表される。 ■壮大な戦国スペクタクル・ドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」 本作は、戦国の日本を描いたジェームズ・クラベルの小説“SHOGUN”を、「トップガン マーヴェリック」の原案を手掛けたジャスティン・マークスや、真田広之らハリウッドの製作陣により、ドラマシリーズとして描き出した。 物語の舞台となるのは、徳川家康をはじめとした歴史上の人物にインスパイアされた「関ヶ原の戦い」前夜。窮地に立たされた戦国一の武将・虎永(真田広之)と、その家臣となった英国人航海士・按針(コズモ・ジャーヴィス)、二人の運命の鍵を握る謎多きキリシタン・鞠子(アンナ・サワイ)が繰り広げる、歴史の裏側の壮大な“謀り事”や待ち受ける大どんでん返しを描いていく。 なお「SHOGUN 将軍」はディズニープラスで配信中。