大宜味村の廃校にできた山ブックス 棚主43人の共同書店
山ブックス(大宜味村喜如嘉) 大宜味村喜如嘉にある「喜如嘉翔学校」は、2016年に廃校となった村立喜如嘉小学校の建物を活用して2022年に開業した複合施設。工芸品店やカフェ、サウナなど、癒やしを求めて人が集まる施設の一角に、「山ブックス」がある。 この記事の他の写真・図を見る ガラガラと引き戸を開けて入ると、やんばるの緑がまぶしい窓の前に、店主の崎山すなおさん(32)が座っていた。机の上には、村内の津波小図書館で使われていた、図書カードを収める木製のケース。「かえす日をきちんと守りましょう」と書かれた張り紙が、懐かしい気持ちにさせる。 喜如嘉小の校舎を活用 「ここは備品室だったそうです。頑丈な棚があったことが決め手になりました」。入って右の棚には、崎山さんが仕入れた本島北部の市町村史や沖縄の自然や民話などの本が並ぶ。そして左の棚が、山ブックスを特徴づける共同書店だ。棚ごとに「棚主」がいて、それぞれが選んだ本や手書きのポップが棚をカラフルに彩る。2024年9月現在、43人が棚主を務めている。 中学生の頃から父親の故郷・大宜味村で暮らしている崎山さんは書店を始める前、村観光協会に勤めていた。廃校になった津波小の図書館の本4千冊を村役場が処分すると聞いて「もったいない」と、道の駅おおぎみを会場に無償で配布する「おおぎみ古本市」を2023年に企画した。千冊が引き取られ、「本を求めてこんなにたくさんの人がやんばるに来るんだ」と手応えを感じた。 古本市に出店していた沖縄市の古書店・波止場書房の花城美和子さんに開業までの話を聞き、「やんばるに本屋を造りたい」という思いが膨らんだ。 「どんな本屋にしようか」と東京に行き、たくさんの書店を回る中で共同書店に出合った。棚ごとに個人の思いがあふれているのを見て、「店内の半分はこれにしよう!」と決意した。沖縄県内にはまだ一軒もない。共同書店を開いたら、棚主になってみたい人に喜んでもらえるのではないか、と考えた。 「山原の山」「崎山の山」「周りが山に囲まれている」ことから命名した山ブックスは2023年10月20日に開店した。 崎山さんは「共同書店の運営は楽しい」と話す。県内各地から棚主が来て、本を補充したり、売上金を受け渡したりする時はおしゃべりに花が咲く。棚主の縁が新しい客を呼び、交流の循環が生まれる。「子ども棚主もいて、自分で値段を決めたり、はまっていた本を売って新しい本を買ったりしていますよ」。本と人の触れ合いを優しく見守っている。 おすすめは子ども目線の「川満児童文学館」 普段の読書はミステリーやホラーという崎山さん。おすすめの一冊に川満聡・津波信一著「川満児童文学館」(ボーダーインク)を挙げてくれた。子どもが書いた作文をそのまま読む、というラジオ番組のコーナーを本にしたもので「子どもの目を通して書かれた文章がピュアで、とても好き。大人が書けない表現が笑えるし、感動もさせてくれる」と話した。久茂地ブックスクエアには、共同書店の棚主が選んだ本ややんばる関連の本を並べる予定。(出版コンテンツ部・城間有) 書店情報 山ブックス 店主:崎山すなお 住所:大宜味村喜如嘉2083 営業時間:午前11時~午後6時 Instagram:@yama.books 定休日:火・水曜(臨時休業あり)