控室の棋士からも感嘆の声!! 叡王戦第4局直前! 第3局の激戦を振り返る
藤井に疑問手
△8七銀打以下の詰めろを受けるため、藤井は慌てた手つきで▲8七銀と受けたが疑問手。AIの評価値は先手有利から後手有利に逆転した。 戻って、▲8七銀では▲7九桂△6八歩成▲7七銀打という受けがあった。以下△7八と▲同玉と進むと、7九桂が6七の地点も守っていて、後手の攻めが難しかった。藤井も「対局中には気が付きませんでしたが、▲7九桂で明快だったと思います」と後日に語った。
50手に及ぶ1分将棋、仕掛けられる罠のかずかず
数手後に伊藤も1分将棋に突入。糸谷八段は「まだ罠があるはず」とつぶやいた。その言葉通り、藤井はさまざまな勝負手を繰り出していく。 圧倒的な詰将棋力を持つ藤井の王手に、控室では「藤井さんに王手されたら怖い」の声も挙がった。以下△同金寄▲2三桂△同金▲3二銀△同玉▲4三歩成△同馬▲2一銀と進んだ。 ▲2一銀に対して本譜は△3三玉を選んだが、▲5五馬~▲6六飛成と進んだ局面は、先手玉への詰めろが外れたうえに、竜と馬が強力な守備駒となった。
魔法のような手順
アベマで本局の解説をした中村太地八段は「受けがなかったはずの先手玉が安全に。魔法のような手順」と驚いた。続けて「ここでの後手の指し手の難易度が高かったと思います。ここからの指し手の正確さが『勝因』となりました」。
伊藤が叡王獲得に王手
△6七歩が好手。▲同竜は△7五桂の追撃がある。本譜は▲5九玉と逃げたが、くさびが入ったのが大きい。以下△4七桂から王手を続け、△3六銀成▲同玉△3五銀が自玉を安全にしながらの寄せ。▲3七玉に△2五桂を見た勝又七段は「この桂が最後に跳ねたんだね」とポツリ。 77手目の▲1四香以降、いつでも取られてしまう状態にあった1三桂が、最後の寄せで大活躍した。「勝ち将棋鬼のごとし」だ。
146手目、ここで藤井が投了
以下▲3八玉△2一馬▲1六銀△2七銀▲同飛△同歩成▲同銀に△1五桂が詰めろ逃れの詰めろで決め手。藤井は大きく息を吐き、姿勢を正してから投了を告げた。 大激戦を制した伊藤が、2勝1敗で叡王獲得に王手をかけた。藤井が初めてカド番のピンチを迎えた次局は、大注目の一戦となる。最後に、糸谷八段は「伊藤さんが秒読みで正確な寄せでした。『糸谷』なら逆転していました」と本局を総括した。 (第9期叡王戦五番勝負第3局 「勝ち将棋 鬼のごとし」 記/竹内貴浩) 秒読みの中でも正確な指し手が光り勝利を収めた伊藤七段が、この勢いのまま第4局を制し、絶対王者の牙城を崩す可能性は大いにあります。 しかし、初のカド番に追い込まれた藤井八冠も黙ってはいないでしょう。圧倒的中終盤力を武器に挑戦者の猛攻を跳ね返す姿は第3局でも健在であり、第4局でもそれが見られる可能性は十分あります。 2人の読みと意地がぶつかる第4局は、大熱戦になること間違いなしであり、今から目が離せません。
将棋情報局