福島県双葉町に凱旋待ち遠しく 新生相馬野馬追まで1カ月 町騎馬会長 中川健治さん 復活尽力
日程を変更した国重要無形民俗文化財「相馬野馬追」は、5月25日の開幕まで1カ月を切った。標葉(しねは)郷騎馬会に所属している福島県の双葉町騎馬会は“新生野馬追元年”の節目に、町内で14年ぶりに騎馬武者行列を復活させる。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後、初めて勇ましい馬の足音を地域に響かせ、各地に避難している町民の郷土愛や連帯感を強める。 建設業を営む町騎馬会長の中川健治さん(60)=南相馬市に避難=が力を尽くし、相馬野馬追2日目の26日に行われる「帰り馬行列」の再開にこぎ着けた。メイン行事の一つ「神旗争奪戦」を戦い抜いた騎馬武者たちが、地元に凱旋(がいせん)する勇姿を披露する重要な催しだ。 町内では特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が2022(令和4)年8月に解除され、約100人が暮らしている。ただ、住民が交流する場は限られている。「双葉を活気づけるにはどうすべきか」。考えたのが、町民の心に根付いている相馬野馬追の騎馬武者を再び地元で行進させることだった。
震災と原発事故発生前、15騎程度が旧役場周辺の4キロを練り歩いていた。大勢の住民が沿道に詰めかけ、歓声を上げながら見守った。毎年、行列に臨んでいた中川さんは地域が一体となる特別な一日だと感じていた。 誇らしい光景を取り戻したいと昨年夏、中川さんは騎馬会のメンバーに帰り馬行列の再開を提案した。住民が集まる機会をつくることで絆を育み、復興の起爆剤にしたいと訴えた。メンバー全員が賛成してくれた。 町の協力を得て騎馬武者役を募り、9騎の参加が決まった。午後3時30分ごろに町民グラウンドを出発し、JR双葉駅周辺の約1キロを歩く。初陣を迎える孫の元之将(げんのすけ)ちゃん(4)ら親族5人も加わる。規模はかつての水準に達しない。しかし乗馬訓練の成果を発揮し、以前の行列に引けを取らないものにするつもりだ。 「双葉の野馬追を発信し、住民が少しでも笑顔になってくれればうれしい」。強い思いを胸に、出陣の時を待つ。