エヌビディアやウーバーが支援、自動運転トラック「ワービ」が316億円調達
カナダのコンピュータ科学者のラケル・ウルスタンが率いる自動運転テクノロジー企業Waabi(ワービ)は6月17日、既存投資家のコースラベンチャーズとウーバーが主導したシリーズBラウンドで、2億ドル(約316億円)を調達したと発表した。 エヌビディアからの支援も受ける同社は、物流トラックの自動運転技術の商用化を手がけており、2025年までにテキサス州で商業運行を行う計画だ。 トロントを拠点とする設立3年目のワービを率いるウルスタンは、TuSimple(トゥーシンプル)やEmbark(エンバーク)といった多くの競合企業が失敗した自動運転トラックの分野で、成功できると信じている。米先住民の言葉で「ビジョンを持つ者」という意味の社名を持つ同社の人工知能(AI)ソフトウェアは、道路状況を把握し、人間の思考に近い方法で運転操作を行うと彼女は述べている。 「すでに撤退した競合の多くのテクノロジーは、過度に複雑で壊れやすいものでした。私は、自動運転サービスの商用化をより速く、より安全に、そしてより資本効率の高い方法で達成できるまったく異なる技術でこの会社を作りました」とウルスタンは述べている。 自動運転車の開発は、10年前に多くの人々が予想していたよりも遅れており、この分野の企業は苦戦を強いられている。フォードとフォルクスワーゲンの合弁会社のArgo AI(アルゴAI)は閉鎖され、ウーバー傘下のATG(かつてウルタソンがチーフサイエンティストを務めていた)はAurora(オーロラ)に売却され、ゼネラルモーターズのロボットタクシー部門Cruise(クルーズ)も大きな挫折に直面した。また、これまでで最も成功した自動運転テクノロジー企業であるアルファベット傘下のWaymo(ウェイモ)ですら、ロボットタクシー事業に専念するために、トラック事業を中断した。
「行動の結果を理解するように訓練されている」ワービの自動運転
そのような状況下でワービは、テキサス州での試験運行を進め、来年にも初の商業運行を行おうとしている。トラックメーカーのボルボとスカニアも、ポルシェやイケア傘下のインカ・インベストメンツとともに、今回の調達ラウンドに参加した。 ■エヌビディアの支援も 「ワービは、最先端の生成AIを現実世界に適用することで、自動運転トラックを実現しようとしています」と、ワービの主要技術パートナーであるエヌビディアの創設者でCEOのジェンスン・フアンは、声明で述べている。「私は10年以上も前から、ラケル(ウルスタン)のAIにおける先進的な取り組みを支援してきました。不可能を可能にする彼女の粘り強さは、私にとって大きな刺激となっています」と彼は語った。 今回の調達によりワービの累計調達額は、2億8000万ドルを突破した。この金額は、同じく自動運転トラックによる商業配送の準備を進めているオーロラなどの競合の調達額に比べればはるかに少ないが、ウルスタンは、ワービのアプローチは開発や維持にかかるコストがはるかに少ないと考えている。 その違いは、ワービのAIを用いた自動運転が、「行動の結果を理解するように訓練されている」ことから生じているとウルタスンは述べている。つまり、同社のAIは、「もしこの操作を行えば、このようなことが起こる。したがってこれは良いことではない」という推論が行えると彼女は説明する。これに対して、競合他社が採用する、機械学習モデルに依存するデータ重視のAIによるアプローチは、「何をすべきか指示してください」というケースが多いと彼女は特定の企業名を挙げずに語った。 「ワービのAIファーストのアプローチは、スケーラビリティと資本効率の両面で非常に魅力的なソリューションを提供する」と、ウーバーのダラ・コスロシャヒは声明で述べている。
Alan Ohnsman