山本巧次郎被告（2022年）

2022年8月に大阪府堺市で、当時20歳の女子大学生が、元交際相手の男（24）に刺殺された事件。大阪地裁堺支部は男に懲役20年の判決を言い渡しましたが、2月20日、判決を不服として男の弁護人が控訴しました。 【画像を見る】亡くなった大田夏瑚さん（事件当時20）

事件直前に交際を解消も…　被害者宅を訪れ感情を爆発させた被告

山本巧次郎被告（1月29日の初公判）

1審判決によりますと、山本巧次郎被告（24）は2022年8月、堺市西区で、元交際相手の大田夏瑚さん（当時20）を包丁で刺し殺害しました。 山本被告と大田さんは事件の数日前に交際関係を解消。しかし事件当日、山本被告が復縁を求め、その日の夜に大田さんの自宅（集合住宅4階）を訪れます。 そこで被告が感情を爆発させ、包丁で大田さんの両脚を10か所以上切りつけ、さらに右わき腹を刺しました。大田さんはベランダから飛び降り、路上で重篤な状態の中、周囲に助けを求めました。 しかし階段を駆け下りた山本被告が大田さんに馬乗りになり、包丁で胸を複数回刺しました。刺し傷は心臓や肺に達し、大田さんは失血死しました。

被告自ら通報し動機面も説明したが…　法廷では一転 “覚えていない”

事件直後、山本被告は「人を殺しました」「（殺したのは）元カノです」「捕まえてください、待ってます」と自ら警察に通報。確保後の取り調べでは、▽5回くらい刺した　▽別れるくらいだったら死んで、自分もいなくなった方がいい　▽大田さんが窓を開けて、走って飛び降りた という旨の供述をしていました。 しかし裁判で山本被告は、犯行そのものや自ら通報したこと、さらには被害者宅を訪れたことも「覚えていない」と供述していました。 弁護人も、裁判所選任の医師による精神鑑定に基づき「被告は事件当時、『非定型精神病』の圧倒的影響下にあった。刑事責任能力は認められない」などとして、無罪を主張していました。

1審は求刑通り懲役20年判決「必死に生きようと助け求めながら執拗に刺された絶望は想像絶する」

2月13日、大阪地裁堺支部は「被害者が別の男性と外泊したことや、復縁を望んだのに思い通りにならなかった怒りや絶望から犯行に及んだと、合理的に推認できる」「被告は犯行当時のことについて、自らに不都合な点だけ“記憶がない”と供述しており、不自然だ」と指摘。 精神鑑定については「犯行前後の被告に奇異・不合理な言動はなく、目的に沿った行動を取っている点などと照らし合わせると、相反の程度が大きい」として、鑑定結果は採用できないと判断。 「被告には事件当時、精神障害はなく、完全責任能力があった」と断定しました。 そのうえで「重傷を負った被害者を見て、悔い改めて思い直すどころか、かえって殺害を決意し、何の抵抗もできない被害者の胸部を躊躇なく刺した。犯行態様が極めて悪質」「最後まで必死に生きようと助けを求めながら執拗に刺された被害者の絶望は、想像を絶する」と指弾。 検察側の求刑通り、山本被告に懲役20年の判決を言い渡しました。

被告の弁護人が大阪高裁に控訴

大阪地裁堺支部によりますと、この判決を不服として2月20日、山本被告の弁護人が大阪高裁に控訴したということです。