先発投手の登板間隔の主流は中4日から中5日へ――佐々木朗希の成功を“後押し”するかもしれないMLBのトレンドの変化<SLUGGER>
今までとは違った形のサクセス・ストーリーを描く可能性
参考になるのは、大谷が投手として頭角を現した21年からの3年間だ。 大谷はその3年間で、74試合に先発して34勝16敗、防御率2.84と圧倒的な成績を残した。年平均では25先発で143イニングを投げ、11勝5敗、防御率2.84、181奪三振と「エース級投手」の数字を残している。注目すべきは、大谷がその間、中6日以上の登板間隔を開けるより、中5日で先発した方が総体的に結果は良かったという事実だ。 ◎投手・大谷 2021年からの3年間の成績 ▼中5日 2021 6試合 4勝0敗 防御率2.31 WHIP0.90 K/BB7.50 2022 12試合 8勝3敗 防御率2.83 WHIP0.91 K/BB4.32 2023 15試合 8勝3敗 防御率2.83 WHIP1.00 K/BB3.23 ▼中6日以上 2021 17試合 5勝2敗 防御率3.55 WHIP1.17 K/BB2.92 2022 16試合 8勝5敗 防御率2.89 WHIP1.09 K/BB5.64 2023 7試合 1勝2敗 防御率4.68 WHIP1.35 K/BB2.39 それでも2度目のトミー・ジョン手術をすることになったので、「いくら成績が良くても、中5日は無理だった」と否定的な見方をする人はいるだろう。だが、事実として「投手・大谷」を「打者・大谷」と同等かそれ以上の評価に押し上げたのは、この3年間の投手成績があったからだ。 佐々木の登板間隔が、大谷1年目のように中6日になるのか、「エース級投手」として君臨した3年間のように中5日に移行するような形になるのかは、現時点では分からない。分かっているのは、佐々木には今までとは違った形のサクセス・ストーリーを描ける可能性があるということだろう。 考えてみれば、彼がMLBで自己最多の21登板を果たしても、130回を投げただけでも、NPB時代の彼の実績を考えれば、十分に成功したと言える。プロ野球人生初の規定投球回数に達したのなら、それはもう、大成功と考えられる。大谷や千賀や今永に比べてNPB時代の成績が拙い分、MLBでさらなる成功を収める可能性は高いわけだ。 最後になるが、佐々木がMLBで年俸調停権を取得する時は26歳、FA権獲得時は29歳になっている。彼がその時点で「成功」と呼べるようなキャリアを歩んでいるならば、31歳でカブスと6年総額1億2600万ドル(現レートで約192億7800万円)で契約したダルビッシュのように、NPBではあり得ないような高額契約も勝ち取れるはずだ。 そう、今は「25歳ルール」のおかげで山本のように長期契約できず、「バーゲンセール」と考えられている彼は、いつの日か周囲が驚くような高額契約を手にする可能性があるのだ。 それが千葉ロッテへの譲渡金にまったく反映されないのは、球団やファンの方々にとっては納得のいかないことだろうけれど、すでに決まってしまったこと。これ以上、何を言っても仕方ない。 それならば、逆風覚悟、批判覚悟で海を渡る若者を、今はとにかく、応援してやろうではないか――。 文●ナガオ勝司 【著者プロフィール】 シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO 【記事】「10失点した後ですら球場に来るのが楽しかった」今永昇太が振り返る充実のメジャー1年目と日本開幕戦への決意<SLUGGER>
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