中国で活躍する「グランフルエンサー」たち
【東方新報】中国・上海市内で一人暮らしをしている86歳の朱錦沁(Zhu Jinqin)さんは、「おばあちゃんインフルエンサー」として知られている。 1938年に上海市で生まれた朱さんは、北京医学院公共衛生学部に入学。卒業後は西部の青海省(Qinghai)でペストの予防・治療活動に半生をささげてきた。子どもたちは独立し、夫は3年前に先立った。そして娘に勧められて最近、SNSにショート動画を投稿するようになった。 自分の青春時代の話から、現役時代は守秘義務で明かせなかった辺境での衛生活動、そして最近の日常まで思うがままに語り、その中で自分の「死」についても考えを述べた。「過度な延命治療は望まない」「自分が死んだら、すべて簡素に済ませてほしい。骨つぼは一番安いものでいい」。さらにネット上で青海省時代の同僚と自分の子どもたちのグループを作り、朱さんの死後に連絡を取り合えるようにした。その上で「生きているうちは、毎日を楽しく過ごそう」と語った。 動画は50万以上の「いいね!」がつき、「人生を達観したおばあちゃん」と称賛を集めている。「昔の体験を若い世代に伝えたいと思ったが、反響に驚きました」と朱さん。最初は動画作成に戸惑ったが、今では娘に字幕をつけてもらう以外は自分でこなしている。健康に暮らしていることをフォロワーに伝えるため、動画や写真を毎日アップしている。 2021年に発表された第7回国勢調査では、中国の60歳以上人口は2億6000万人に達し、総人口の18.7パーセントを占める。このうち、子どもと離れて夫婦だけで暮らす、もしくは一人暮らしの高齢者は半数以上とされる。中国では現金を使わずスマホで支払いをするデジタル社会がすみずみまで広がり、高齢者が取り残されるデジタル・ディバイド(情報格差)の問題がよく取り上げられるが、一方でSNSを活用する高齢者の話題も増えてきている。 おしゃれな服装で北京市の街をさっそうと歩く50~70代の女性グループ「ファッション・グランマ」や、Z世代のストリートファッションを着こなす83歳の元大学教授など、グランフルエンサー(シニア世代のインフルエンサー)が次々と登場している。 中国人民大学(Renmin University of China)人口・発展研究センターの靳永愛(Jin Yongai)准教授は「ショートビデオの利用は高齢者のソーシャルネットワークを拡大し、現実社会への活動を促進する機会にもなり、社会とのつながりを強化する」と話す。 中国では1960年代生まれの男女は高等教育の機会が広がった最初の世代で、今後この世代が「おじいちゃん・おばあちゃん」になる頃は、さらにSNSを活用した交流が広がっていくことになりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。