<いざ令和の春>センバツ鳥取城北 軌跡/下 神宮の熱戦、観戦し奮起 /鳥取
高校野球の秋の地区大会を勝ち上がった強豪が勢ぞろいした明治神宮大会。開幕日の2019年11月15日、鳥取城北ナインらは神宮球場(東京・新宿区)にいた。近くの神宮外苑のいちょう並木の木々が黄金色に変わりつつあった。主将の吉田貫汰(かんた)内野手(2年)はスタンドからグラウンドを見下ろして思った。「試合に出ていたらどんなやったろう……」 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 その2週間近く前の同月3日。どらドラパーク米子市民球場(米子市)で、チームは倉敷商(岡山2位)との中国地区大会決勝に臨んでいた。初回に先制したが、二回以降は相手投手の好投で五回まで1安打に抑えられていた。一方、先発した中川央(ひろき)投手(2年)が三回に捕まり計3失点。救援に回った阪上陸投手(同)も2ランを浴び四回までに点差が8に広がった。 「自分がこれまでにやってきた練習はこんなもんだったのか!」。五回のマウンドに上がる際、阪上投手は自分を鼓舞した。大舞台で野球がしたいという強い気持ちが球に乗り移り、その後は無失点に抑えて援護を待つのみとなった。 粘投に打撃陣も奮起。六、七回の集中打で一挙6加点。七回には頼れる主砲・吉田主将の3ランも飛び出した。追い上げむなしく2点差で敗れたが、多くのものを得ることができた。山木博之監督(44)は「(選手の)意地を見た。欠点もまだたくさんあるが勝負強くなってきた」とねぎらった。 実は学校の修学旅行が、明治神宮大会の日程と重なっており、マネジャーを含む2年メンバー全員は参加をとりやめるつもりだったが、自由時間を使い球場に足を運ぶと自分たちを破った倉敷商が、大会準Vの健大高崎(群馬)相手に好ゲームを見せていた。 目標は日本一――。センバツでも変わらない高みに向け、選手らは日々研さんを続けている。吉田主将は改めて誓う。「(目標は)高いところに設定したが、目先の一戦一戦を全力で戦いたい」(この連載は小坂春乃が担当しました)