「宇宙戦艦ヤマト」放送50周年記念上映会の観客に手を振る（左から）庵野秀明氏、出渕裕氏、氷川竜介氏＝6日夜、東京都新宿区（岩崎叶汰撮影）

日本のアニメブームの先駆けとなった「宇宙戦艦ヤマト」の放送が、昭和49年10月に始まってから半世紀。放送50周年記念上映会が東京都内で行われ、「エヴァンゲリオン」シリーズ監督の庵野秀明氏（64）、メカニックデザイナーでリメーク作「宇宙戦艦ヤマト2199」監督の出渕裕氏（65）、アニメ・特撮研究家の氷川竜介氏（66）がトークイベントに参加した。3人が語る「ヤマト」の新しさと、色あせない魅力とは。 【場面カット】「宇宙戦艦ヤマト」は再放送で人気が高まり、アニメブームの火付け役に ■テレビ漫画じゃあり得ない 第1話のイベント上映は6日午後7時半、50年前の初回放送に日付と時間を合わせて始まった。冒頭は、冥王星の星域でガミラス艦隊と対峙する地球防衛艦隊。その近くを通った謎の宇宙船は火星に墜落し、投げ出された金髪の美女は、通信カプセルを手に死んでいた。冥王星で敗れた沖田艦長は、帰還途中、放射能で赤く変わり果てた地球を見つめながら、「わしは命あるかぎり戦うぞ。決して絶望はしない」と誓う…。 出渕氏は「説明はなく、つかみはOKで、沖田艦が帰ってから現状が説明されていく。ヤマトを予感させながら最後に沈没戦艦のところまで引っ張っていく構成が素晴らしい」と、主役のヤマトが姿を見せない第1話の構成を絶賛する。氷川氏も「まだ〝テレビ漫画〟の時代に、説明がないのがあり得ないこと」と当時の衝撃を振り返った。 「宇宙戦艦ヤマトに出会わなければ、今の自分はなかった」と公言している庵野氏。「僕がヤマトの沼にはめられたのは、第2話の友永和秀さん（アニメーター）の主砲の作画」とマニアックな体験を披露し、さらに「波動砲にしびれた。『電源切れ』（沖田艦長の命令）から古代君（主人公）がカチッてやる（発射）まで2分10秒もかかっているんです。その2分10秒が本当に素晴らしい。大砲1発打つのに2分10秒もかけているテレビ漫画なんて当時なかった」と熱く語った。 ■主張するエフェクトで厚み 中高生だった3人は、「ヤマトは魅力を語りたくなるアニメだった」と口を揃えた。 氷川氏は、アニメーションディレクターを務めた石黒昇氏が、水や火などを描くエフェクトアニメーションに憧れて業界に入ったという逸話を紹介。庵野氏の話を受けて「（波動砲などの）段取りをちゃんと全部描くことと、エフェクトアニメーションがストーリー以上に主張してくる。それでストーリーに厚みが出て、信じられるものになる。そういうところが、ヤマトがそれまでのアニメとは違っていた」と解説した。