信念や思想のない岸田首相の〝ポピュリズム〟政権運営 政治不信の正体、大衆の「政治家を血祭りに挙げたい」感情をかき立て
【八木秀次 突破する日本】 自民党派閥の裏金事件を受けた、衆院政治改革特別委員会が来週26日に初開催される。国民に「政治とカネ」への嫌悪感が広がるなか、後半国会最大の焦点となる政治資金規正法改正に向けた議論がスタートする。ただ、近年にない「政治不信」が高まっている原因はこれだけではない。麗澤大学教授の八木秀次氏は、岸田文雄首相の強い信念や思想のない「後手後手」の「ポピュリズム政治」が、大衆の「政治家を血祭りに挙げたい」という感情をかき立てていると喝破した。 ◇ 今年1月、岸田首相が宏池会(岸田派)の解消を突然言い始めたとき、「他派閥も倣わざるを得ず、解消か活動停止に追い込まれるだろう」「これは9月の自民党総裁選に向けて首相には都合がよい」と、夕刊フジの本欄(1月22日発行)で指摘した。 個々の議員と首相(自民党総裁)や執行部との間に介在して首相らを牽制(けんせい)し、個々の議員を守ってきた派閥という「中間団体」が解消することで、首相らは個々の議員を直接統治でき、議員は従わざるを得なくなる。ライバルの台頭に向けての「議員の集結」を阻止できるというのが理由だ。 同時に、それは強い政治的信念や思想を持った統治者には都合がよいが、そうでない統治者の場合、マスコミ世論の動向に振り回され、不安定な「ポピュリズム政治」になる可能性が高いとも指摘しておいた。その後の政治情勢は、ほぼ私の見立て通りに推移しているようだ。 岸田首相には強い政治的信念や思想は見受けられない。人からよく思われたいタイプだ。だから、マスコミ世論が示す方向に流れていく。その割に、現在は「独裁者」だ。独裁者が相談や根回しなしでマスコミ世論の示す方向に向かっていく。 しかも、決断までにやや時間の掛かるタイプに見える。マスコミ世論はその先を行っている。だから常に「後手後手」と批判される。だが、いったん決断すると猪突(ちょとつ)猛進、ここでも相談や根回しなしに実行に移す。岸田首相の政権運営の姿はそう見える。 旧清和政策研究会(安倍派)や旧志帥会(二階派)の政治資金パーティー券収入不記載事件、いわゆる裏金事件だが、東京地検特捜部の捜査の結果は「大山鳴動して鼠一匹」の状態だった。特捜部がメディアにリークして大騒ぎした割に若干名の逮捕や略式起訴に終わった。