【日経平均株価】34年ぶり更新をどう読めばいいか知りたい人へ 日本のGDPが不調でも最高値更新した理由
なぜ株高でGDPが不調なのか?
予想通り、メディアを中心に「日本の国内総生産(GDP)が不調なのに、株高は矛盾するのではないか」という疑問が取りざたされている。残念ながら、GDPの不調と株価の続伸の間に矛盾はない。 かねて国際収支構造の分析と共に論じているように、日本企業が稼いだ収益は国内に還流せず海外に滞留している。これは第一次所得収支黒字の構造からも確認できる。 筆者試算によれば、その円転率(※第一次所得収支黒字のうち円買いに繋がっていると思われる比率)は年によって異なるが25~30%程度と目される。+30兆円の黒字を稼いでも、日本経済に還流してくるのは+10兆円程度と考えておいた方が良い。 こうした傾向はよりミクロのデータからも確認可能だ。図表(3)は経済産業省「海外事業活動基本調査」から遡及可能な03年度以降について、日本企業が海外に保有する内部留保残高の推移を見たものだ。21年度調査(21年4月初頭~22年3月末)は約48兆円と過去最大を記録している。円安が始まったのがちょうど22年3月末なので、その影響は21年度調査から既に織り込まれつつあるだろう。 言うまでもなく、22年度や23年度の調査ではより円安の影響が色濃く反映されるため、内部留保残高はさらに嵩上げされてくるはずである。国内経済情勢はさておき、こうした企業部門の現状が株価に反映されてくれば株価水準は当然、押し上げられてくる。
企業部門の収益が国内に還流されない以上、家計部門の所得環境も改善が遅れてしまう。結果、国内の消費・投資は振るわない。内需総崩れの様相と共にGDPが全く冴えない状況になっている現状は決して不思議ではない。 大企業を中心として連日のように賃上げ報道がなされている背景にはそうしなければ労働力が確保できない状況がいよいよ顕現化しているからである。あと10年もすれば、生産年齢人口が現在の就業者人口を割り込む展開も可視化されるだろう。 そこで起きることは労働者の奪い合いであり、名目賃金は必然的に上がらざるを得ない。原資のある企業から賃上げは始まっていくし、それがインフレ経済を定着させるし、株価も為替も新しい水準を目指す。