「ボケ防止グッズ」は本当に認知症に効果ある?テレビゲームやおもちゃは?親の自尊心を傷つけるプレゼントになることも【医師・山田悠史】
おもちゃ
高齢者の認知症ケアにおいて、ロボットやぬいぐるみなどの「おもちゃ」も注目されています。特に、介護施設での活用が進んでいて、認知症がすでにある人の症状の緩和には役立つ可能性が示唆されています。しかし、これらのおもちゃが認知症の予防に効果があるかどうかについては、明確な結論が出ていません。 例えば、パロというアザラシ型のロボットがあります。このロボットは、認知症患者の気分を改善し、興味を引き出し、興奮状態を和らげる効果があると示唆する研究があります。実際、通常のケアのみよりもパロを使用した方が、これらの面で効果的であったとする結果が示されています(参考文献4,5)。しかし、認知症予防に対しては十分に研究をされていません。 また、普通のぬいぐるみも気分や興味の面で効果があるとされています。ロボットでもぬいぐるみでも、通常のケアと比べて中立的な感情が減り、気分が改善したという結果が報告されているのです(参考文献4,5)。 結論として、ロボットやぬいぐるみといったおもちゃは、認知症がある患者さんに対しては症状を改善したり、興味を引き出したりする可能性があるかもしれませんが、認知症を予防する効果については、残念ながら十分な証拠がありません。
効果が高いとわかっていることを優先させよう
このように、研究が行われているものですら、「認知症予防に有効だ!」と結論を導くには十分でないことがわかりました。こんな風に書き続けると、「研究、研究、証拠、証拠ってうるさいな」と思われるかもしれません。たしかに、研究なんてされていなくても、証拠がなくても、個人の利用に際しては別に良いと言えば良いのです。 しかし、証拠を確かめていく作業は、より間違いが少ない方法を探す作業です。なぜ認知症予防でそれが大切かといえば、認知症予防には、より間違いの少ないとわかっている方法があるからです。有効とする証拠がない場合、より確実性の高い他の予防手段より優先してまでそれをやる必要があるのかについては考えておく必要があるでしょう。