台風21号高潮 大阪・神戸で瞬間的に過去最高潮位
第2室戸台風を上回る
関西国際空港の滑走路や駐機場が冠水するなど、大規模な被害が生じた台風21号による高潮について、気象庁は5日、大阪と神戸の2カ所の検潮所で第2室戸台風(1961年9月)の時に観測した過去最高潮位を上回っていたと発表した。 第2室戸台風の時の最高値は約3時間の潮位を平均した値である「平滑値」が大阪293センチ、神戸230センチだったが、今回の台風ではより短い時間の3分平均値ではあるが、大阪で329センチ、神戸233センチの潮位を記録した。
今後は瞬間的な潮位である3分平均値を採用へ
気象庁海洋気象課によると、3分平均値のデータを取り始めたのは1997年4月以降で、第2室戸台風の時に瞬間的にどのぐらいの高さにまで到達していたかは不明だという。同課は「これまで統計上は平滑値を用いていた。しかし、今回の台風で、平滑値で見ると大阪は232センチで第2室戸台風の記録を下回ったが、空港が大規模に冠水する被害が出てしまった。今後は、防災上の観点から、発表する潮位が過小評価にならないように、3分平均値を最高潮位としていく」と新たな基準を採用する方針を明らかにした。
和歌山、徳島でも暫定的に過去最高
なお、今後採用する予定の新たな基準に当てはめても、御坊(和歌山県)と阿波由岐(徳島県)の2カ所の検潮所でそれぞれ観測された316センチ、203センチという値は過去最高潮位だという。ただ、過去のデータを詳しく調べていないため、今後精査していく必要があるとしている。
吹き寄せ効果が顕著な高潮招く
気象庁は今回、近畿地方や四国地方で過去最高クラスの潮位が観測された理由として、「吹き寄せ効果」が大きかったとしている。吹き寄せ効果は、風が沖から海岸に向かって吹いた時に、海水が海岸付近に吹き寄せられ海面が上昇する現象で、風速が2倍になれば海面上昇は4倍になる。大阪湾などでは、台風によって海岸に向かう方向の強い南風が吹いたことが顕著な高潮を招いたという。 (取材・文:飯田和樹)