サッカー王国・静岡で岳南が目指す 新しいクラブの形
フィロソフィーを掲げ クラブが目指すべき指針を定める
将来的なJリーグ入りを目指している岳南ではあるが、“ただ試合に勝つことだけを求めるのではなく、富士山のように強く・逞しく・ぶれない心で人々を魅了するサッカーを目指す”というフィロソフィーを掲げている。 これは赤星代表取締役がクラブにジョインする前から大事にしていた部分ではあるが、「私が入ったタイミングで上のリーグに昇格できたり、スポンサーが増えたりと状況が変わっていく中、クラブとしてのコンセプトを言語化して前に進んでいこう」という思いで掲げたものだ。 Jリーグ入りには勝利し、上位リーグに昇格し続けることが最大の近道ではある。しかし海外を転戦し、多くのクラブの形を見てきた赤星代表取締役はクラブの価値を測る上で勝利が全てではないといことを実感している。 「すでにJクラブはたくさんあって、Jリーグ入りを目指しているクラブも多く、ビジョンはどこも一緒というわけではありません。私たちは地域活性化という点で地域の課題とうまくリンクしながら、全国や世界に向けて分かりやすいビジョンにしないといけないと思っています」 当然勝利を第一に求めるサポーター、スポンサーも少なからず存在しているが「イベントも含めていろんな方々にクラブを好きになってもらいたい。もちろん勝っていけば評価はされますが、逆に負けても応援してもらえるようなクラブになっていかないとクラブ運営は長く続かないのかなという思いはあります」と赤星代表取締役。 この言葉を体現すべく、スクールの開校はもちろん、キャリア教育やイベントの開催など、地域活性化のための積極的な活動に励んでいる。
クラブの活動を通し 次世代につながる財産を残したい
地域の活性化という意味ではクラブが主体となり、来年の1月5日に富士市と富士宮市出身の元Jリーガーが集うイベント“Mt FUJI Football Dream Festival”を開催する。赤星代表取締役は2年前から構想しており、チームの体制がある程度整い、さらに平岡コーチが入団したこのタイミングでの開催に至った。その背景にあるのは地元への思いだ。 先述したようにサッカー王国・静岡においてサッカー熱が高いのは西部や東部。かつては岳南地区の有望な選手も清水や磐田のユースチーム、強豪校に進学する傾向が強く、その後の受け皿となる大学やクラブチームがなく、同地区出身の選手は地元でプレーしたくてもできない状況だった。 その受け皿になることも、クラブに課されたミッションである。「この地を離れていた子たちが、選手でもスタッフでも地元に帰ってきてくれるような場所が作れたらいいんじゃないかなとは思います」と赤星代表取締役。将来的には育成システムを構築し、一貫した指導で人材を育成していくことも目指している。 今シーズン指導者として帰郷し、これまでの経験を選手たちに還元している平岡コーチも同じ思いだ。「イベントやクラブを通して、僕たちのように富士市、富士宮市からプロになった選手がいることを知ってほしい。そしてこの地域から1人でも多くのJリーガーを輩出したいです」と目標を定めている。 そして赤星代表取締役は「まずはこのクラブを大きくしたい。次に引き継いでくれる人たちのために、そしてこのクラブが残っていけるように、今は一生懸命やり続けることが目標です」と意気込む。 成長過程の岳南にゴールはない。地域活性化と未来のクラブを担う子どもたちのためにこれからも走り続ける。