<響け!ユーフォニアム3>第一回オーディション実施 葉月初選出の歓喜の裏で、波乱も勃発
吹奏楽に青春を捧げ、全国大会での金賞を目指す高校生たちの姿を描いた「響け!ユーフォニアム」(毎週日曜昼5:00-5:25ほか、NHK Eテレ/NHKプラス・Lemino・ABEMA・ディズニープラス・FOD・Huluほかで配信)、シリーズの「最終楽章」となるTVシリーズ第3期。新部長に就任した黄前久美子(CV:黒沢ともよ)は3年生に進級し、部員たちとともに高校最後の大会へと臨んでいく。第六回は、府大会の演奏メンバーを決めるオーディションを描いた「ゆらぎのディゾナンス」。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】号泣必至! SNSでも喜びの声多数、初選出となった加藤葉月(CV:朝井彩加) ■再度オーディション辞退を提案する真由に久美子は… 府大会までいよいよ一ヶ月と迫った吹奏楽部。部員たちは目前に控えたオーディションへ向け、練習にもより熱が入っていく。そんななか、転入生の黒江真由(CV:戸松遥)は久美子たちに対し、自分はオーディションを辞退したほうがいいのではないかと再度相談を持ちかける。久美子は「北宇治は実力主義」であることを再び強調するも、真由は「私が選ばれて嬉しい人なんて、本当にいるのかな?」と、渋い表情を浮かべる。二年前、オーディションの判定を巡って部内が対立した出来事を思い出した久美子は、あの時の決断は間違っていないとしながらも、改めてオーディションという仕組みの難しさを感じるのだった。 前話に引き続いて、真由はまたしてもオーディションへの進退問題を持ち出し、久美子を困惑させる。久美子は今回、前回よりも強く、かつ丁寧に「実力主義」であることを真由に説明するが、結果的に二年前の出来事を思い出すこととなり、精神的にはややダメージを受けている様子だ。このとき久美子が思い出した二年前の出来事とは、トランペットのソロ奏者をめぐって行われたオーディションのこと。実力者だった3年生の中世古香織(CV:茅原実里)を差し置いて、1年生の高坂麗奈(CV:安済知佳)が選ばれたことによって、部内の雰囲気はぎくしゃくすることとなった。さらに一年前のオーディションでは、当時3年生だった中川夏紀(CV:藤村鼓乃美)が選抜されるように、久石奏(CV:雨宮天)がワザと手を抜くという出来事もあったことを考えると、オーディションがトラブルの種になりがちであることは間違いない。SNSでも「オーディションは毎年揉めるね」「今年も拗れてきたねぇ」といった声が寄せられていた。 ■卒業後の進路について語り合う久美子と梓 学校からの帰り道、たまたま同じ中学校出身の佐々木梓(CV:田所あずさ)と会った久美子。ふたりはベンチに座り、それぞれの卒業後の進路について語り合う。梓は麗奈と同じく音大志望ではあるものの、その先の将来のことは考えていないと言う。久美子はそういう考え方もあるのかと思いつつ、自身の進路についてまだ結論は出ない。そして時は流れ、いよいよオーディション当日。先日の件から「真由は本気で演奏しないのではないか?」との心配もあったが、それは杞憂に終わりホッとしたのもつかの間、自分の番が回ってくると、改めて今年が最後の挑戦なのだと気合いがみなぎる久美子だった。 久しぶりの久美子と梓との会話は、やはり進路の話題だった。誰もが一目置く高い演奏技術をもつ梓でさえ、将来のことはぼんやりとしか考えていないことを知り、「そんな考えもあるのか」とボソッと呟いたり、梓から「音楽に関わっていない久美子は想像できないけど」と言われてハッとするなど、久美子のリアクションが印象的。なかなか進路が決めきれないでいる久美子だが、もしかすると、少しだけ何かに気づいた瞬間だったのかもしれない。ちなみに久美子と梓が会った宇治橋のシーンには大量の虫が発生していた。これは「トビケラ」で、現実の宇治橋でも同じ現象がよく見られるなど、京都アニメーションらしい芸の細かさが光っていた。これにはSNSでも「トビケラまでがリアルw」「今の時期、現実もこんな感じです」と驚きの声があがっていた。 ■葉月の初選出シーンは号泣必至! 細かい表情にも注目 顧問の松本美知恵(CV:久川綾)からオーディションの結果が発表される。順当に実力者の名前が挙げられていくなか、注目のユーフォニアムは久美子と真由、奏の3人が選出された。一方チューバでは加藤葉月(CV:朝井彩加)が初選出されるも、2年生の鈴木さつき(CV:久野美咲)が落ち、代わりに1年生の釜屋すずめ(CV:夏川椎菜)が選ばれるという波乱も。さらには、その結果を受けたチューバの2年生、鈴木美玲(CV:七瀬彩夏)は、さつきが落ちた理由が分からないと、密かに久美子に相談するのだった。久美子は自分としても意外だったと本心を明かしつつも、滝先生を信じるしかないと美玲を説得。さらには意見を言ってくれた美玲に感謝の言葉を伝えるのだった。 オーディション結果の発表シーンは、なんといっても葉月の初選出の瞬間に注目だ。選抜メンバーが次々と名前を呼ばれていくなか、途中から静かにBGMが流れ始めると、葉月の名前が呼ばれたところでメロディが一気に動き出すという構成で、ファンであれば落涙確実の感動シーンとなっている。名前を呼ばれた瞬間の葉月の表情は、少し驚いたあとにすぐに顔を引き締め、同時に瞳を潤ませるなど、短い時間のなかに多彩な感情を感じさせてくれる名作画。さらには隣から笑顔を向ける川島緑輝(CV:豊田萌絵)や、後ろで微笑む久美子、目を合わせて頷く美玲など、葉月を取り巻く全員の優しさが感じられるシーンだった。その後、葉月と緑輝が腕を触り合いながら喜びを分かち合う描写も含めて、「地道な努力が報われた瞬間」の感動を教えてくれた。 ■久美子と真由、校舎裏での攻防戦に視聴者も反応 美玲からの相談を受けたあと、校舎裏でいつものように個人練習をする久美子は、心を落ち着かせるために「響け!ユーフォニアム」を吹き始める。すると、その音を聴いた真由がやってきて「なんの曲?」と尋ねるも、久美子は「教えるほどの曲じゃない」とごまかしてしまう。その後、音楽室の鍵を返しに職員室へ入った久美子は、思い切って滝にオーディションの選考について尋ねてみる。滝は、チューバに初心者のすずめを選んだのは、彼女の「音量」が武器になると考えてのことだと話す。こうして一応の答えを得た久美子は、滝の言葉を信じ、コンクールへと臨んでいくのだった 前回から引き続き、久美子と真由の校舎裏での攻防が展開された。前回は真由から「あがた祭」に誘われた際、「先約がある」とついつい嘘を付いてしまった久美子だが、今回は「響け!ユーフォニアム」の曲を教えることをそっと避けた。どうにも自分のことを話すのをためらってしまう久美子だが、さすがに自分の態度の硬化には気づいたようで、真由のことを苦手だなと意識したと思われる。個人練習のための場所は往々にしてナワバリのようなものだということはこれまでも度々描かれてきたが、真由と久美子の微妙な距離感が、映像としても如実に表現されたシーンとなった。この校舎裏での攻防戦についてはSNSでも「真由って唐突に踏み込んでくるよね」「悪気はないんだろうけど真由も自重せいw」などの声が寄せられていた。 今週は、コンクールに向けてのオーディションを通じ、部員たちの意気込みを感じられるエピソードだった。振り返ってみれば、ここまでは新入生たちとの交流や月永求(CV:土屋神葉)の家族問題、久美子と真由、久美子と麗奈の関係性など、どちらかと言えば個別の関係性がクローズアップされてきた。しかし、ここに来ていよいよ部全体の様子が描かれたことで、本当に最後のコンクールが始まるのだという緊張感が一気に漂い始めてきたように感じる。さて次回第七回は5月19日(日)放送予定。期待して待とう! ■文/岡本大介