【映画『あまろっく』江口のりこさんインタビュー】「好きな人を見つけて一緒に暮らしていくって、最高じゃないですか」
「やっぱり会社って人と一緒に仕事するわけだから、そこで自分さえよければいいとか、自分が気持ちよく仕事できればいい、という態度や考えは間違っている。他の人たちが自分の思うように全然動かないから、一人でやって来たのが優子ですが、冷静に見たら、この人、やっぱ間違ってると思いますよ!」 なるほど。優子に厳しいですね(笑)。 「それで1人ぼっちになっちゃって、そこへ早希ちゃんという女の子が家にやって来るわけですが、それって一番煩(わずら)わしいですよね。同じ家に住むということは、関わらなきゃならないわけだから。つまり優子は、お父さんから課題を与えられたわけですよ。そこから優子が少しずつ成長するということに繋がっていく――。でもやっぱり、1人で黙々と何かをして来たのは優子の特性であり、良いところでもあり悪い部分でもあったんでしょうね」
意外なことが役作りに生きる!
そんな優子は等身大な人物でもあると思いましたが、役作りは今回何かされましたか? 「皆さん役作りって、どうされているんでしょうね!? 何をもってして役作りというのか。家に帰って、みんな何か役作りみたいなことをやっているのか、私は知らないので他の人と比べられずに良く分からないまま答えますが、ただ役に立ったと思うのは、ボートをひたすら漕ぐこと。優子がボートを漕ぐシーンがあるのですが(大学時代にボートの有望選手だった過去のシーンが挿入される)、その練習をさせてもらったことですね。ただ、ひたすらずっと漕ぐ。ボートって、1人で同じ動作をずっとやっているじゃないですか。その時に、“優子ってこういう人なのかな”と見えてくる感覚があったんです。ただただ真っ直ぐ――みたいな。もちろんボートを上手く乗るための練習という意味合いもありましたが、それ以上に漕いでいる時間が芝居をする上で、色んなことに役立った感覚がありました」 ということは、意外に優子という人物像を自分の中で掴むのは、ちょっと時間が必要だったということですか? 「難しかったですよ。というのも、この物語って、すごく分かりやすいんですよ。挫折してニートになって戻って来た娘が、お父さんが連れて来た20歳の再婚相手にビックリして、そうこうしてるうちにお父さんが……という。読み物としては(頭に)入ってきやすいですが、“こんなことがあって、こんなことになって、こうでしたとさ”という少々ファンタジー要素の強い物語を、いざ肉体を使って芝居をするのは、とても難しかった。尼崎に1ヶ月滞在して撮るわけですから、本当にその町に住んでいる地に足ついた人間として演じたかったので、そんな物語をどうリアルに繋げるかが難しいところでした」