最新作『青の祓魔師 島根啓明結社篇』に今日から間に合う “青エク”過去作ストーリーを一挙に振り返り
悪魔の血を引く少年・奥村燐(CV:岡本信彦)が、父親である魔神(サタン)を倒すために最強の“祓魔師(エクソシスト)”を目指す『青の祓魔師』シリーズ。原作は累計発行部数2500万部の大人気漫画で、2011年にTVアニメ化されたのを皮切りに、2012年には劇場版、さらに2017年にはTVアニメ『京都不浄王篇』が放送されるなど、人気シリーズとしての地位を確立。そんな『青エク』シリーズは、この1月から『島根啓明結社篇』が放送中だ。初のアニメ化から約13年、『京都不浄王篇』から約7年の時を経ているだけに「あれ? 今ってどんなストーリーだったっけ?」という人も多いかもしれない。今回はそんな人向けに、これまでのストーリーをざっくりと振り返りつつ、現在放送中の『島根啓明結社篇』の注目ポイントについてもまとめていく。仮に「そもそも“青エク”を観たことがないです」という完全初心者でも、これだけ読んでおけば新シーズンを楽しめること間違いなしなので、ぜひ一読してほしい。 【写真】燐の双子の弟・雪男が抱えている大きな葛藤も注目ポイント ストーリーを紹介する前に、最初に全体像から説明しておこう。2011年に放送されたTVアニメは全25話で、原作第4巻途中までの「正十字学園入学~林間合宿」を描いたのち、アニメオリジナルストーリーが展開。2012年の劇場版はアニメオリジナルストーリー、2017年のTVアニメでは原作第4~9巻の「京都・不浄王篇」が描かれ、現在放送中のTVアニメ『島根啓明結社篇』は、原作10巻からのアニメ化となっている。このように、初期のアニメにはオリジナル要素もあったが、今回は『島根啓明結社篇』にスッと入りやすいよう、原作に沿ってストーリーを紹介していく。 ■主人公・燐は悪魔の王“魔神”の息子だった? 2011年放送『青の祓魔師』をプレイバック 本作の主人公・奥村燐は、双子の弟・雪男(CV:福山潤)とともに神父の藤本獅郎(CV:藤原啓治※『京都不浄王篇』~平田広明)に育てられて中学卒業を迎える。「医者になる」という夢をもつ真面目で秀才な雪男とは対称的に、やりたいことも見つからずにただ日々を送る燐。しかしある日、転機が訪れる。ふつうの人間には見えない「悪魔」の存在が見えるようになり、さらには自分が悪魔の王である「魔神」の息子であることが判明したのだ。燐を人間として育ててきた獅郎は、この世界は人間の住む「物質界(アッシャー)」 と悪魔が住む「虚無界(ゲヘナ)」に分かれていること、燐は魔神と人間の母親の間に産まれた子で、双子のうち燐だけがその力を継いでいること、獅郎は悪魔を祓う「祓魔師(エクソシスト)」であることを燐に伝える。さらに獅郎は燐の悪魔の力が封じられている「降魔剣」を託すが、一瞬の隙をつかれて魔神に憑依されてしまう。獅郎は燐を守るために自ら命を断ち、魔神を「虚無界(ゲヘナ)」へとかえすのだった。こうして燐は、獅郎の仇である魔神を倒すことを決意し、最強の祓魔師を目指すことになる。序盤の第1~2話は、燐のバックボーンと新たな決意が描かれた“青エク”シリーズの土台となるストーリーだ。とくに獅郎が自分の胸を刺し「こいつは俺の息子だ…! 返してもらおうか…!!!!」と言い切るシーンは屈指の名シーンでもある(第2話)。 獅郎の友人で祓魔師組織・正十字騎士團の日本支部長であるメフィスト・フェレス(CV:神谷浩史)に対し、祓魔師になることを直談判した燐は雪男と同じ正十字学園へ入学。学園内に設けられた祓魔師養成機関「祓魔塾」に通いはじめる。しかしそこには、講師として新入生を迎える雪男の姿があった。じつは雪男は燐の秘密を幼い頃から知っており、兄を悪魔から守るため、優秀な祓魔師となっていたのだ。燐は自分のはるか先を行く雪男に複雑な想いを抱えながらも、「祓魔塾」の仲間たちとともに祓魔師への一歩を踏み出す。強化合宿での悪魔との戦いを経た塾生メンバーは、晴れて「訓練生(ペイジ)」から「候補生(エクスワイア)」へと昇格。しかし、続く遊園地内での霊(ゴースト)探し任務にて、強大な悪魔である「地の王」アマイモン(CV:柿原徹也)に襲撃された燐は、自分の意思に反して悪魔の力を暴走させてしまう。さらにピンチの燐を救ったのは、正十字騎士團ヴァチカン本部の監察官・霧隠シュラ(CV.佐藤利奈)だった。アマイモンは撤退したものの、シュラは燐が魔神の息子だと確信し、燐を殺そうとする。そこで語られたのは、シュラがかつて獅郎の弟子だったこと、獅郎が最強の祓魔師である「聖騎士(パラディン)」であったことだった。シュラは、魔神の子を武器として育てる獅郎の試みに否定的だが、燐は獅郎が間違っていないことを証明しようと「聖騎士」になることを宣言。これに心を動かされたシュラは、以後燐の修業に手を貸すこととなる。第3~13話は燐と塾生たちとの出会いや交流を軸として、それぞれのキャラクター性が少しづつ垣間見えていく展開。このメンバーはその後もずっと一緒に戦う仲間で、やがて燐にとって大切な存在になっていくことを考えると、まだぎこちなさや初々しさのあるやり取りは、どこか微笑ましくも感じるだろう。 夏休み。燐たち塾生メンバーは、実戦任務のテストも兼ねた林間合宿に参加する。仲間との共同作業にワクワクする燐だが、それもつかの間。さっそく実戦任務の参加資格をかけたテストが始まる。塾生7名に対してクリア枠は3つのため、最初こそ単独行動をしていた塾生メンバーだが、やがて合流し5名で協力しながらクリアを目指す。塾生メンバーには悪魔の力を隠していた燐は、ここではほぼ力を使わず、仲間の力を借りることでテストをクリア。これによってみんなとの絆が強まったと思いきや、そこに再びアマイモンが登場し、燐たちを襲撃する。そして仲間たちが危機に陥るなか、仲間のために悪魔の力を解放した燐は、圧倒的な強さでアマイモンを追い込む。しかし、自我を喪った燐はそのまま暴走。このバトルの一部始終を見ていた現「聖騎士」のアーサー・A・エンジェル(CV:小野大輔)に捕らえられ、正十字騎士團のヴァチカン本部に連行されてしまう。この事件により、燐が魔神の息子であることが塾生たちにも知れ渡ることとなり、一度は友情が育まれたかと思われた塾生内の絆にも亀裂が生まれることとなってしまう。ともあれ、メフィストのフォローもあって燐の処刑は保留扱いとなり、燐は再び学園へと戻ってくる。この林間合宿は、燐が仲間との絆を深めたと同時に、それが壊れてしまうストーリーでもあり、燐の葛藤が胸を締め付けるエピソードとなっている。 ■古都・京都を舞台に、波乱続きの展開から目が離せない『京都不浄王篇』を振り返り 正十字学園の最深部に封印されていた「不浄王の左目」が奪われる事件が起きる。燐たち塾生メンバーは京都出張所に封印されている「右目」の警護を応援するために京都へ向かうことに。しかし、先の林間合宿で燐の正体が魔神の息子であることを知ってしまった塾生たちは、明らかに燐のことを避けるそぶりを見せる。そんなギクシャクした雰囲気のまま京都出張所へ着いた一行だったが、そこは塾生の勝呂竜士(CV:中井和哉)の実家だった。勝呂は由緒ある寺の息子で、同じく塾生の志摩廉造(CV:遊佐浩二)、三輪子猫丸(CV:梶裕貴)とは同門の幼馴染。志摩と子猫丸は、いずれは寺を継ぐであろう竜士を支える側近として、ともに行動していたのだ。しかし明陀宗の座主である勝呂の父親・勝呂達磨(CV:浦山迅)の評判はあまり芳しくなく、勝呂はそんな父親に対して煮え切らない想いを抱えていた。序盤の第1~3話では、舞台となる京都出張所の面々が次々と登場し、複雑な人間関係が描かれる。そんななかで燐は、志摩や子猫丸と直接話をして、みんなの信頼を取り戻していこうと決意を新たにするのだった。 そんな折り、京都出張所から「不浄王の右目」が奪われてしまう事件が起こる。手引きしたのは、達磨への不信感を募らせた宝生蝮(CV:M・A・O)。彼女は「左目」を奪った犯人である藤堂三郎太(CV:山路和弘)にそそのかされて協力していた。「両目」を手に入れた藤堂は、蝮の思惑に反し、江戸時代に数万人を殺したという悪魔「不浄王」を復活させてしまう。一方燐は、勝呂と達磨の親子喧嘩を止めようとする際、禁止されていた悪魔の力を使ったことで牢屋に入れられてしまう。そこに送られてきたのは、達磨からの手紙。その手紙には若き日の獅郎と達磨の出会いが綴られており、燐に助けを求める内容だった。その後、塾生たちに助けられて牢屋を出た燐はみんなと和解し、全員で「不浄王」の元へと向かう。この第4~7話は、内通者の存在や「不浄王」の復活によって混乱する京都出張所の様子や、バラバラだった塾生たちが再び一つにまとまっていく過程が描かれており、さまざまな思惑が交差する複雑なストーリーが魅力だ。 第8話から物語はクライマックスに突入。山中で倒れていた達磨を発見した燐たちは、達磨から「不浄王」の倒し方を聞く。達磨の使い魔を継承した勝呂は、燐と二人で「不浄王」の中心へと向かう。悪魔の力を制御できないことに自信を無くし、なかなか剣を抜けなかった燐だったが、勝呂の決死の覚悟を目の当たりにして土壇場で「降魔剣」を抜くことに成功。さらに火の悪魔・烏枢沙摩(ウチシュマー)の力を借りることで、「不浄王」の討伐を成し遂げる。一方そのころ、雪男は不死身の再生能力を得て若返った藤堂(CV:諏訪部順一)と対峙していた。苦戦を強いられる雪男だが、志摩柔造(CV:小西克幸)たちの援護もあり、一時的に撃退する。こうして京都を舞台に繰り広げられた『京都不浄王篇』は落着となる。第8~12話は、派手なバトルシーンはもちろん、塾生メンバーそれぞれの想いが溢れた献身的なサポートも見どころ。みんなの想いを感じた燐が、己の力を出し切り、かつ完璧に制御できるなど、塾生メンバー全員の成長が見て取れる戦いとなった。しかし一方では、雪男の精神が大きく揺らぎ、左目に異変が起こるなど不穏な描写も。信頼できる仲間を得て大きく成長していく燐と、心身ともに危うい状態の雪男。双子の今後の運命が気になるところだ。 ■待望の最新シーズンが現在放送中! 『島根啓明結社篇』のポイント解説 最後は、1月より放送がスタートしたばかりの『島根啓明結社篇』の見どころについて。京都での大決戦を経て再び学園生活に戻った燐たちだったが、その生活は平穏とは言い難い。学園内をはじめ、世界各地で悪魔にまつわる異変が相次ぐようになったためだ。さらに正十字学園祭では、「啓明結社イルミナティ」の総帥である光の王・ルシフェル(CV:内山昂輝)が現れ、「魔神サタンの復活」を掲げて正十字騎士團に宣戦布告するというとんでもない事態となる。そして、今回のキーマンとなるのが塾生メンバーの神木出雲(CV:喜多村英梨)だ。これまでその内面や家庭環境が深く描写されたことはなく、ほかの塾生たちと距離を保っていたツンデレキャラの出雲。そんな彼女の抱える秘密が明らかになっていくのが『島根啓明結社篇』だ。そしてさらには、塾生の意外な一面が露わになるなど、まさにこれまでに積み上げてきた塾生たちのイメージを覆す仕掛け満載なシーズンとなっている。放送はまだ始まったばかり。今からでも遅くないから、ぜひチェックしてみよう。 ■文/岡本大介