阪神・桐敷拓馬が嵐の降雨コールドから学ぶ 「スペードのエース」の心構え
【球界ここだけの話】信頼厚い「スペードのエース」が、まさかの経験から学びを得た。4月16日の巨人戦は1―1で延長戦にさしかかった直後、甲子園が嵐に見舞われて降雨コールド引き分け。延長十回のマウンドに上がる準備をしていた桐敷拓馬投手(24)が、その時の様子を振り返った。 「ずっとブルペンで準備していたんですけど、あと2、3球投げてから出ていこうかと思っていたところで中断と言われて…」 実際、球場では「ピッチャー、ハビー・ゲラに代わりまして、桐敷」とコールされていた。その直後に一層強まる雨。そして強風。稲光がくっきり見えるほどの雷が落ちる大きな音も聞こえて、スタンドから悲鳴が上がった。数分で試合終了が決定し、出番を待っていた桐敷は「自分は見に行かないで、ほかのピッチャーに天気の様子を見てもらっていたんですけど。そのまま(試合が)終わっちゃいました」と苦笑いした。外から見れば気の毒でしかない経験だが、どうにもできない悪天候からも教訓を得たという。 「準備していたのに雨が降って、中断になってということが初めてで。『こういうこともあるんだ』って。あの試合はそのままコールドでしたけど、投げている途中で中断から再開になったらどう準備するんだとか、そういうことも考えたいと思いました」 マウンドには立てなかったが、桐敷にとっての「想定外」がひとつ「想定内」へ変わった出来事になった。存在感が増す一方の左のセットアッパーは、めったにない経験を成長につなげようという意識の高さを示した。 翌17日には6回無失点の伊藤将の後を受けて七回に登板。2死二塁を招き、一発同点の場面で岡本和との対戦を迎えたが、外角低めへの149キロで見逃し三振に抑えた。「四球もOKと思って広く攻めた結果、あのボールを投げられた」と2―0零封リレーに貢献した。 続く18日も1-1の九回に岡本和からフォークで空振り三振を奪うなど1回無失点。延長十回のサヨナラ勝ちにつなげた。嵐のあとの2連勝に欠かせない〝助演〟の役割を果たした。 「スペードのエース」は今季も健在。ここぞでの活躍に備え、万事にきっちり備えていく。(邨田直人)