なぜ「1株1ドル」が1200倍に大化けしたのか…「ガラケーからスマホ」をはるかに上回る"AIバブル"の凄まじさ
■半導体分野でTSMCのシェアが変化する可能性も エヌビディアやGAFAMなどのIT先端企業は、高性能なGPUの開発、調達体制を強化し、AIの性能向上をより重視するだろう。それに伴い、AI分野の成長機会は加速度的に増加するだろう。 一つの例はデータセンターだ。AIの学習強化にデータセンターは欠かせない。データセンターの増加で、経済、安全保障、日常生活や教育などの分野でAI利用は勢いづくだろう。AI需要増加で、半導体分野の変革を激化するはずだ。 半導体分野の専門家によると、エヌビディアのGPUは演算スピードが速いが、大量の電力を消費する課題がある。カナダの新興企業である“テンストレント”は、演算装置とHBM(広帯域幅メモリー、データ転送速度が速い記憶装置)の配置を工夫し、より高性能なAIチップの供給を目指すという。 テンストレントは、わが国のラピダスと協業しチップレット方式(複数の汎用型半導体を組み合わせ、特定の機能を発揮する製造方式)でのAIチップ生産と低価格化も目指す。AIチップ分野での開発競争の激化で、エヌビディアの優位性に変化が出ることもあるかもしれない。半導体製造分野でTSMCのシェアが変化する可能性もある。 ■次世代のエネルギーは“地上の太陽”? 発電技術の重要性も高まっている。米国ではAI需要の増加で、発電関連株が上昇した。原子力発電所などを運営するヴィストラエナジーは、データセンターの電力需要増加で業績期待が高まり株価は上昇した。 次世代発電技術への期待も高まっている。マイクロソフトは“核融合発電”の新興企業、ヘリオン・エナジーと購入契約を締結した。核融合発電は、原子核同士を融合させ膨大なエネルギーが生じる反応を利用する。太陽が核融合で熱を発生していることから“地上の太陽”と呼ぶこともある。新技術の開発で既存の大企業の優位性が揺らぐこともあるだろう。 AI分野の成長加速で、既存分野の産業構造が変わったり、業界再編が加速したりする可能性は高まる。当面、世界経済全体で物価は高止まりし、金利上昇はかなり不安定に推移しそうだ。AI関連分野の成長機会を手に入れるため、先端分野の設備投資や研究開発体制を強化するか否か、企業の長期存続、主要国経済成長にかなりの重要な影響があるだろう。 ---------- 真壁 昭夫(まかべ・あきお) 多摩大学特別招聘教授 1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。 ----------
多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫