令和版黒いダイヤ(10月6日)
温泉地といえばお土産が付きもの。旅館に泊まると、一階にある売り場につい立ち寄りたくなる。まんじゅう、クッキー、漬物などに、ご当地の食文化が表れている▼「Very Hard石炭ラスク」。いわき湯本温泉観光協会と地元の洋菓子店が共同で開発し、先月売り出した。パン生地に竹炭を練り込み、漆黒の見た目は石炭そっくり。「ボリッ、ボリッ」と食感はかなり硬い。かむほどに、メープルのほんのりとした甘さが口いっぱいに広がる。角張った外見のいかつさと、まろやかな味わいのミスマッチが面白い▼震災、原発事故、新型コロナ禍と観光への逆風が続き、温泉地への客の入り込みは依然厳しい。注目を集める独創的なお土産をつくれないか―。いわき湯本温泉の関係者は約8カ月かけて検討を重ね、商品化にこぎ着けた。かつて国内のエネルギーを支えた常磐炭鉱の歴史を伝えたいとの思いを込めた。包装紙にくじを付けた遊び心は童心をくすぐる▼観光には歴史や文化、風俗、景観など「国の光」をよく観察し、外の人に示すとの意味がある。郷土愛がぎゅっと詰まった石炭ラスクは令和版「黒いダイヤ」。どうか、地域を明るく照らす光源に。<2024・10・6>