同じ障害者なのになぜ?精神障害者には「入院」の助成ない自治体も 「お金なく入院ためらう」人たちの現実
「経済的に苦しい精神障害者は多い」と団体 改善求める
障害者向けの入院医療費助成について、対象を「身体」と「知的」のみとし「精神」を原則除外している市町村が、長野県内で半数の39市町村に上ることが分かった。県内の精神障害者や家族、支援者らがこのほど、全県への制度拡大を求める任意団体「精神障がい者の福祉医療を実現する長野県民会議」を設立。現状では住む市町村によって助成の有無が分かれてしまうため、県民会議は「経済的に苦しい精神障害者は多い」と早急な制度改善を県や関係市町村に働きかけていく。(藤田沙織) 【一覧】「助成なし」の長野県内の市町村。市町村によって対応はまちまち
「入院費が払えないから入院をためらってしまう」「障害年金だけでは入院費が足りず、退院後に負債が残った人もいる」―。
オンラインを併用して長野や松本、飯田市で10月中旬に開いた県民会議の初会合。25人前後が参加し、課題を語り合った。千曲市の男性(72)は、精神障害のある息子が5年ほど前に精神科病院に入院した際、入院費を息子の障害年金だけで賄いきれず、親が一部を負担したとして「(知的、身体と)同じ『障害者』なのに、精神障害には入院費の助成がないのが一番こたえる」と話した。
障害者に対する医療費助成は県や市町村による制度で、障害の程度や所得に応じ対象が限られることも。通常は公的医療保険適用後の自己負担分(3割など)が対象で、県の制度があれば県が2分の1、市町村が2分の1を負担する。身体や知的障害の入院費と通院費、精神障害の通院費には県の制度があり、ほぼ全市町村で助成されるが、精神障害の入院費には県の助成が原則ない。そのため独自に精神障害者向け入院費の助成制度を設けている市町村もあるが、県内77市町村中38市町村にとどまる。
県民会議が精神障害者にも入院費助成を求める背景には当事者たちの経済的困窮がある。県精神保健福祉士協会副会長で豊科病院(安曇野市)に勤務する同会議支援者、荒川豊さんは「精神障害者には集中力が続かない、物事を整理して考えることが苦手―という人もいて、就労が難しい傾向がある」と説明する。