配当金の課税方式統一や様式のインボイス対応…2024年提出の確定申告で知っておくべき4つの変更点
今年もいよいよ確定申告の季節がやってきた。今年は、2023(令和5)年提出の確定申告であった「申告書Aの廃止・申告書Bへの一本化」ほどの大きな変更点はない。ただし、細かな変更もあるため、申告の際には間違えないよう注意が必要だ。 そこで2024(令和6)年に行う確定申告がどのように変更されたか、主に一般の人に関係がある項目をピックアップ。注意点などについて解説していこう。 ● 1)国外居住親族の扶養控除の適用条件が変更に 扶養控除について、国外居住者で30~69歳までの扶養親族は、2023年分から扶養控除の対象外になった。ただし、国外居住者でも、以下の条件のいずれかに当てはまる場合は、扶養控除の対象となる。 (1)留学生 (2)障害者 (3)年38万円以上の送金を受けている人 それに伴い、確定申告書第二表の「配偶者や親族に関する事項」欄の「国外居住」に、上記の例外に該当する場合は、その番号の記入が必要になった。 ● 2)上場株式の配当・譲渡所得の課税方式が統一化 配当金や株式の譲渡益について、2022年分の確定申告までは所得税と住民税でそれぞれ異なる課税方式を選べたため、たとえば所得税では申告をして、住民税では申告不要を選ぶことで、節税するというスキームが存在した。 ところが2023年分から課税方式が統一化。所得税の確定申告をした場合は、住民税も自動的に申告する方式に変更された。 これに伴い、確定申告書第二表の「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄が廃止された。 ● 3)特定非常災害に関連する損失の繰越控除期間が延長に 特定非常災害(政府によって指定された非常災害)に関連する損失の繰越控除期間が、3年間から5年間に延長された。 さらに、2023年4月1日以降に発生した特定非常災害の被災者が、「雑損失または純損失の繰越控除」を申告する際には、追加された確定申告第四表「特定非常災害の被災者の方用の付表」を使用することになった。 なお、2024年1月1日に発生した「能登半島地震」は特定非常災害に指定されている。 そのため来年の確定申告(2025年2月17日~3月17日)より、特定非常災害に関する損失の繰越控除を適用することができる。 ● 4)収支内訳書・青色申告決算書に「登録番号(法人番号)」欄が追加 白色申告または雑所得がある際に提出する「収支内訳書」と、青色申告をする際に提出する「青色申告決算書」が、2023年分の確定申告から、インボイス制度に対応した様式に変更になった。 まず、青色申告決算書にはこれまでなかった「売上(収入)金額の明細」欄と「仕入金額の明細」欄が追加された。また、収支内訳書・青色申告決算書それぞれに、取引先の「登録番号(法人番号)」の記入欄が追加になった。 登録番号または法人番号の記入は任意だが、記入すると、売上先名・仕入先名および所在地の記入を省略することができる。 ●今年の確定申告の注意点・申告期限について 佐原三枝子税理士によると、今年の申告でもっとも悩ましいのが、「2.上場株式の配当・譲渡所得の課税方式の統一化」だという。 ーーーーーー 「令和4年までは配当控除を利用して所得税の還付を受けながらも、住民税ではそれらの配当を申告不要とすることで国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料などへの影響を排除し、医療機関での窓口負担割合の増加も抑制できました。 今回の申告からは、税金の還付を優先するのか、保険料等への影響を考えて配当の申告を抑制するのか、考える必要がありそうです」 ーーーーーー 2023年分の確定申告の期限は、2024年2月16日(金)~年3月15日(金)までとなっている。確定申告を行う際は、これらの変更点を確認しながら、早めに準備を進めるといいだろう。 <参考> ・国税庁|令和5年1月からの国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係) https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0022009-107_02.pdf ・国税庁|令和 4 年度税制改正の概要「地方税法等の改正(2)」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/explanation/PDF/p0007-0070.pdf ・国税庁|申告書第四表(損失申告用)付表(特定非常災害の被災者の方用)の書き方 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2023/pdf/027.pdf 【取材協力税理士】 佐原三枝子(さはらみえこ)税理士 Beautiful Business Beautiful Life 中小企業の利益構造と経営者の思考を美しくし、関わる人すべての人生を豊かにすることを理念に掲げ、税務、人事、DXを柱として税理士を超えた経営コンサルティングを提供している 事務所名 : 佐原税理士事務所 事務所URL:https://www.office-sahara1.jp/
弁護士ドットコムニュース編集部