「クリントン候補指名」に水差すメール流出 サイバー攻撃の黒幕はロシア?
6月中旬、米紙ワシントンポストは米民主党全国委員会(DNC)のコンピューターネットワークが複数のハッカーによるサイバー攻撃を受け、ネットワーク内に保存されていた党関係者のメールやチャットの内容に不正なアクセスが行われ、民主党内部で幹部クラスのメンバーが協議していた選挙戦略などの情報が盗み見されていた。情報漏えいという形で世に出たメールの内容では、民主党上層部がクリントン候補のライバルであったバーニー・サンダース氏を組織的に敗北させようと画策していた事実も判明。サンダース支持者からの批判を受け、デビー・ワッサーマン・シュルツ下院議員は25日に全国大会終了後にDNC委員長を辞任すると表明した。このサイバー攻撃にはロシア政府の影も見え隠れし、さらに政治問題化する可能性が高まっている。 【写真】「反トランプ」vs.「反クリントン」の構図浮かぶ大統領選
「党がクリントンに肩入れ」怒るサンダース支持者
11月8日に本選がある2016年米大統領選挙は異様な雰囲気の中で迎える。これまでは民主・共和両党で最も支持を集めた候補者がそれぞれ予備選を勝ち抜き、別の候補者を支持していた党員も全国大会後には氏名を受諾した候補者を一丸となってサポートするのが通例であったが、今回は様相が異なる。 ドナルド・トランプ氏が候補者指名を受けた共和党では、トランプのこれまでの言動に嫌悪感を示す共和党員が、11月の本選でトランプに投票しないと公言するケースが珍しくなく、トランプへの支援を見送る共和党の政治家や大統領経験者も少なくない。2日はニューヨーク州選出のリチャード・ハンナ下院議員が、「トランプ氏が候補者に選出されたことは国の恥」と地元メディアにコメントし、11月の大統領選挙ではクリントン候補に投票すると公言した。ハンナ議員は愛国法の適用拡大に反対したり、同成婚を支持するなど、共和党内では比較的リベラルな政治姿勢で知られているが、現職の共和党議員が大統領選でライバル政党の候補者に投票すると公言するのは過去に例がなく、アメリカ国内では一枚岩になれない共和党のジレンマが垣間見えるエピソードとして報じられている。 一枚岩になれない点では民主党も同じだが、オバマ大統領やバーニー・サンダース氏が党内の分裂を防ぐために積極的に動いた結果、クリントン候補の支持率は上昇した。7月25日から28日にかけてフィラデルフィアで行われた民主党全国大会では、開幕直後からサンダース支持者らによる、クリントン候補へのブーイングやサンダース氏を支持するコールが相次いだが、オバマ大統領やサンダース氏が自ら党の結束力の重要性を参加者に語りかけた。トランプ候補の支持率がクリントン候補の支持率を抜いた時期もあったが、民主党の重鎮らによる呼びかけがが功を奏したのか、全国大会終了後にNBCが行った世論調査では、クリントン候補が5ポイントの差をつけてトランプ氏をリードする結果となっている。 党内分裂という点で考えれば、共和党よりもポジティブなムードが漂う民主党だが、サンダース支持者を激怒させたのが、漏えいという形で世に出てしまったクリントンを予備選挙で勝利させるために民主党内部で進められていた「選挙戦略」の存在であった。党が特定の候補に肩入れしていた事実が判明したことで、フェアではない民主党の内部事情に多くのサンダース支持者が激怒した。これらの情報が明るみになったきっかけは、複数のハッカーによる民主党全国大会へのサイバー攻撃で、ネットワーク上の情報が世間に知れ渡ってしまったのだ。