佐野史郎さんも通った、松江の老舗喫茶 55周年で記念コンサート
松江市出身の俳優、佐野史郎さんらが青春時代に足を運んだ老舗喫茶店「喫茶MG」(同市西茶町)が今年、55周年を迎えた。10月26日には同市内のホテルで記念コンサートが開かれ、ゆかりのアーティストらが集まって節目を祝った。常連客から「あっちゃん」と親しまれる同店の浅野淳子さん(76)は「コンサートはMGの集大成。お店をこんなに長く続けることができて幸せ」と話している。 常連客らがボランティアで受け付けなどを手伝ったコンサートには約150人の観客が集まった。冒頭、浅野さんが「演奏をどうぞお楽しみください」とあいさつした後、ギタリストの山本恭司さんや佐野さんらが結成する「森野川BAND」、シンガー・ソングライターの浜田真理子さんやノグチアツシさんらの「マリマリノグチ」らMGを慕う総勢14人のアーティストが出演。MGの縁で知り合ったお客さん同士が久しぶりの再会を喜ぶ光景も見られた。 レトロな雰囲気が漂うMGは1969年に開店。店名は英国の名車にちなんだ。浅野さんの母と弟の3人で始めたが、母が10年ほど前に死去し、今は姉弟やアルバイトで切り盛りしている。 開店当時、21歳だった浅野さんはロックやフォークソングなどのレコードを集めており、店内で曲を流していると、音楽好きの若者らが次第に集まるようになった。店を慕ってくれるお客さんも多く、オーディオの配線をしてくれる学生もいたという。 また、お金がない学生も多かったことから、付け払いで食事をする人や、1円玉や5円玉をかき集めてコーヒー代を支払う「強者(つわもの)」も。浅野さんは「社会人になってまとめて学生時代の付けを払ってくれるお客さんもいた。ずっと覚えていてくれたことがうれしくてね」と話す。高校時代からの常連という男性(70)は「家から持ってきた好きなアーティストのレコードをお店でかけてもらったり友達とおしゃべりしたりしていたなあ。あっちゃんはお姉さん的な存在だった」と青春時代の思い出を振り返る。 浅野さんは55周年に合わせこれまで店内で撮りためてきた写真やお客さんにもらった写真などをデータ化したDVDを作製。「MG写真館」と名付け、常連客らに記念品として配った。常連客の若かりし頃の写真やゆかりのアーティスト、松江に赴任しMGのファンになった「転勤族」が、松江を離れる前に浅野さんと撮った記念写真など、約1000枚が収録されている。写真は全部で2000枚ほどあったが半分ほどに厳選したという。 「本当は全部収録したかったんだけどね」と語る浅野さんは、「いつかはお店もなくなると思うけど、MGにはこんな人たちが集まっていたんだ、ということを形にしたかった。本当にお客さんに恵まれた」と話している。【目野創】