今さら聞けない「春闘」 時期や流れ、2024年春闘基本方針を解説
2024年春闘基本方針
2024年の春闘では、基本方針として以下の要求が掲げられています。 【賃上げ要求の内容】 ・底上げ:経済社会のステージ転換を着実に進めるべく、すべての働く人の生活を持続的に向上させるマクロの観点と各産業の「底上げ」「底支え」「格差是正」の取り組み強化を促す観点から、前年を上回る賃上げをめざす。 ・賃上げ分 3%以上、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め 5%以上の賃上げを目安とする。 【引用】 【重点分野-2】2024 春季生活闘争方針|日本労働組合総連合会 過去の賃上げ要求の推移をみると、バブル期の約6%をピークとして、低い賃上げ水準の時代が続きました。バブル崩壊で経営を取り巻く環境が厳しくなり、春闘も雇用維持が優先され、1990年代には2%近くまで賃上げ要求水準が低下します。賃上げを求める環境に変化したのは、2010年代です。デフレ脱却の鍵として、政府が賃上げを重視しましたが、結果としては2%台に留まり、高い賃上げは実現しませんでした。インフレによる物価上昇が進んだ2023年から、春闘の賃上げ要求は5%程度、2024年には5%以上と強いものになり、賃上げの機運が高まっていると注目されています。 【引用】 賃上げ率は3.60%で1994年以来の3%台に ――2023年「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」|労働政策研究・研修機構
春闘の流れ
春闘は、毎年以下の流れで行われます。 ・政府から経団連に対する賃上げ要請 ・連合の事前検討・闘争方針の発表 ・産業別組織の要求水準の決定 ・企業別労働組合の要求内容の決定 ・労使交渉・妥結 ■政府から経団連に対する賃上げ要請 春闘に先立ち、毎年11月頃に政府が経団連に対して賃上げの要請を行います。政府からの要請に拘束力はありませんが、企業にとってはある程度配慮しなければならないものであり、その後の春闘の流れに影響を与えます。 ■連合の事前検討・闘争方針の発表 日本労働組合総連合会や全国労働組合総連合が、数ヵ月にわたって事前の検討を行います。12月~1月にかけて、春闘の全体方針が発表されます。全体方針は、その後産業別の労働組合、企業別の労働組合が具体的な要求水準を決定する際の基準となります。 ■産業別組織の要求水準の決定 産業別組織とは、電機連合など産業別に運営される労働組合です。企業が具体的な水準を決定する前に、産業別労働組合が全体方針に従い、要求水準を決定します。産業別労働組合の要求水準は、その後企業の労働組合が個別交渉を行う際の基準となります。 ■企業別労働組合の要求内容の決定 産業別労働組合の要求をもとに、企業の労働組合は、企業に対する具体的な要求内容を決定します。要求の提出は、2月末までに行うのが一般的です。 ■労使交渉・妥結 企業別の労使交渉が行われます。春闘では、年度内に翌年度の労働条件を確立させることを目指し、3月中に企業から回答が行われます。企業の回答が集中する3月中旬が春闘の山場です。大手企業の労働組合の妥結状況が判明したあと、その結果を踏まえて中小企業の春闘が妥結されるのが近年の流れです。
団体交渉では「不当労働行為」に当てはまらないように注意
春闘は労働組合による団体交渉です。そのため、労働組合法が適用されます。労働組合法は、企業(使用者)による不当労働行為を禁止しています(労働組合法第7条)。